つねぴーblog@内科専門医

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水様便(水溶性下痢)の原因

水様便(水溶性下痢)の原因・機序

 

便が水様性になってしまうのには様々な原因がある。

原因ごとに説明します。

1、大腸の炎症(感染症)
黄色ブドウ球菌やコレラなどの毒素型の感染症により水様便を呈する。(侵襲性のあるサルモネラ・カンピロバクターなどでは粘血便となる)

 

2、薬剤性
抗菌薬により菌交代現象が引き起こされ、クロストリジウムディフィシルが大量に増殖し産生される毒素により大腸の粘膜が侵されることにより水様便となる。

 

3、炎症性疾患
クローン病で縦走潰瘍が軽度であれば水様便となる。潰瘍性大腸炎の場合潰瘍があるので粘血便となる。

 

4、腸管の動きの亢進
過敏性腸炎などのように腸管が活発に動くとやはり水様性の下痢となる。また、カルチノイド症候群でセロトニンが大量に分泌されても腸管の平滑筋運動が活発となり水様便となる。

 

5、WDHA症候群
WDHAとは水様性下痢、低K血症、無酸症の頭文字をとったものである。病態としてはVIPを腫瘍性に産生してしまうことによる(VIPは血管活動性小腸ペプチドのこと)。VIPは小腸からの水分と電解質の分泌を亢進させるので名前の通り水様性下痢となってしまうのである。また、腸液中にはKが豊富に含まれるので低K血症にもなってしまう。                                     

 

6、溶質成分の増加
腸管内の溶質成分が増えれば、浸透圧により水が腸管側に引っ張られる。すると水分量が増えて当然水様便となる。原因は様々であるがたとえば・・・

乳糖不耐症では乳糖を分解できないために
慢性膵炎では脂肪を分解できない
胃摘出後のblind loop症候群では盲端部に細菌が増殖し、胆汁酸を奪ってしまい脂肪便となり浸透圧が上昇して結果的に水様性下痢になる。
タンパク漏出性胃腸炎ではタンパクが漏れることにより浸透圧が上がり水も増えて水溶性下痢となる。

 

7、pHの低下(Zollinger-Ellison症候群(ガストリノーマ)
腫瘍性にガストリンが分泌されてそれによって胃酸の分泌量も上昇する。過剰に分泌された胃酸が小腸に流れ込むので小腸内のpHが大幅に低下してしまう。そうすると、本来小腸で働くはずの消化酵素の至適pHからずれるためにうまく消化できない。すると脂肪分の分解も行えなくなるので脂肪便となり、脂肪便ということは浸透圧が上昇するということなので水分が腸管に移動してきて水溶性下痢となるのである。