A-aDO2開大の原因と計算式
■A-aDO2とは
A-aDO2とは肺胞気酸素分圧(PAO2)と動脈血酸素分圧(PaO2)の差のことである。
Dはdifferenceの頭文字、差を意味している。
正常なガス交換の場合A-aDO2が0になることが理想であるが、実際は生理的な換気血流不均等やシャントが存在するため、正常でもA-aDO2は5~15ほどになる。
■A-aDO2開大の原因
1:換気血流不均等(間質性肺炎、肺水腫、ARDS、COPDなど)
2:拡散障害(間質性肺炎、肺水腫、ARDS、COPDなど)
3:シャント(先天性心疾患、無気肺、肺動静脈瘻)
いずれも低酸素血症の原因となりPaO2の低下をきたす。故にPAO2-PaO2(=AaDO2)の値が大きくなってしまうのである。つまりAaDO2が大きければ肺胞には酸素は届いているのにそこから先の血液にうまく渡っていないということを意味する。換気することはできているが、呼吸が障害されている→肺が悪いと考えることが出来る。
■AaDO2って臨床でいつ使うの?
動脈血液ガスでPaCO2とPaO2が分かれば↓の公式でAaDO2が計算できる。
AaDO2=(150-PaCO2/0.8 )-PaO2
動脈血液ガスをとる状況というのは呼吸状態が悪そう、あるいは全身状態が悪そうな時などであるがPaO2とPaCO2がわかったらとりあえずAaDO2を計算してみる。上の式に代入するだけ。
AaDO2が開いていたら肺が悪い(換気血流不均衡、拡散障害、シャント)
AaDO2が正常であれば肺胞低換気(呼吸筋や神経など肺以外が悪い)
→臨床的にはAaDO2の値で低酸素血症の病態を鑑別するのに役立つ!
■AaDO2の導出
前述のとおり、AaDO2とはA-aDO2とは肺胞気酸素分圧(PAO2)と動脈血酸素分圧(PaO2)の差のことである。
つまり、AaDO2=PAO2-PaO2となる。
肺胞酸素分圧(PAO2)は直接測定は難しいため、
PAO2=吸入酸素分圧(PIO2)ー肺胞二酸化炭素分圧(PACO2) ÷ 呼吸商
という式により求める。
◎解説:なぜ吸入酸素分圧から肺胞二酸化炭素分圧を引くのか?
肺胞では毛細血管からCO2が拡散してきて分圧として含まれるので、このCO2分を引かなくてはならない。
◎解説:肺胞二酸化炭素分圧をなぜ呼吸商で割るのか?
呼吸商とは生体が酸素を1消費するときに、二酸化炭素をどれだけ産生しているかの割合である。食事内容(つまりエネルギー源として何を分解するか)によっても異なるが、一般的に酸素10消費に対して二酸化炭素8ほど産生しているので呼吸商≒0.8となる。PACO2を呼吸商で割ることによって消費された酸素の分圧、つまり「血中から肺胞に出てきたCO2の代わりに肺胞から血液中に入っていったO2分圧」になる。
また、二酸化炭素は酸素と異なり拡散能力が非常に高いので肺胞中も血中も分圧は等しいと考えることが出来る(つまりPACO2=PaCO2)。
よって・・・
PAO2
=吸入酸素分圧ー肺胞二酸化炭素分圧/呼吸商
=150-血中二酸化炭素分圧/0.8
=150-PaCO2/0.8
これをAaDO2=PAO2-PaO2に代入すると
AaDO2=(150-PaCO2/0.8 )-PaO2
というおなじみの(?)式に変形することが出来る。つまりAaDO2もPaO2とPaCO2がわかれば計算できてしまうのである。