壊死性筋膜炎とガス壊疽の違い
壊死性筋膜炎とは…
皮下脂肪織から浅層筋膜における壊死性の急性細菌性感染症で、化膿レンサ球菌によることが多いが、嫌気性菌などが原因になることもある。糖尿病や悪性腫瘍などの基礎疾患を有している患者に起こりやすい。下肢に好発し、突然の高度の発赤、腫脹を生じ、次いで水疱、壊死性変化をきたす。壊死性筋膜炎が疑われる場合はすみやかにデブリードマンを行うべき。
血液検査では白血球増多、好中球の核左方移動、CRP陽性などの急性炎症所見に加えて、ASTALTなどの肝酵素の上昇を見ることが多い。人食いバクテリアと呼ばれている劇症型溶連菌感染症はこの壊死性筋膜炎の一つである。治療は大量の抗菌薬静脈注射に加えて注意深い全身管理を行い、グロブリン投与も考慮する。
*壊死性筋膜炎は皮下から浅層筋膜が侵される病気で、筋肉を覆う深層筋膜が侵されるわけではない。
ガス壊疽とは
ガス産生菌による壊死性筋膜炎を特にガス壊疽と呼ぶ。嫌気性菌が主で、外傷を契機に発症するクロストリジウム性と、糖尿病患者などに見られるガス産生性グラム陰性桿菌による非クロストリジウム性に分けられる。クロストリジウム性のものとしてはウェルシュ菌が最も多い。組織障害にはα毒素がもっとも重要な因子である。
(α毒素の本態はホスホリパーゼCであり、生体の細胞膜を構成するレシチン含有リポタンパク質に作用し、細胞のリン脂質代謝を刺激した結果として膜に損傷を与えて赤血球や体細胞を破壊し、溶血や壊死を起こすと考えられている。)
ガスが皮下に貯留するため触診で握雪感を認め、単純X線やCTでガス貯留象を認める。創部より悪臭のある膿汁を排泄。確定診断は浸出液の塗抹標本の鏡検で、グラム陽性桿菌(ウェルシュ菌)の検出。直ちに切開、デブリードマンを行うべきである。他にも高圧酸素療法も必要に応じて行う。
(高圧酸素療法とは…気密室内で大気圧よりも高い圧の酸素状態にして、血中の溶存酸素量を増加さえ、組織の低酸素血症を改善する治療法。主に救急医療の現場で、CO中毒、重症嫌気性菌感染症、減圧症などに行われる。)
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☆まとめると…
ガス壊疽とはガス生産性の細菌感染症。クロストリジウム性ガス壊疽と非クロストリジウム性ガス壊疽に分けられます。ガス壊疽とはガスを産生する壊死性筋膜炎ともいえるが、クロストリジウム性ガス壊疽は病変の主体が筋肉なので、厳密には非クロストリジウム性ガス壊疽がガス産生性の壊死性筋膜炎といえる。