つねぴーblog@内科専門医

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移転しました。

心臓の刺激伝導系の経路

【刺激伝導系とは】

刺激伝導系とは洞房結節で発生した心拍のリズムを心臓全体の心筋に伝え、有効な拍動を行わせるための構造である。

刺激伝導系を構成する細胞は特殊心筋と呼ばれる。心房・心室の壁を構成する一般の心筋細胞は固有心筋と呼んで区別する。


固有心筋と特殊心筋はともに、外部からの刺激を受けなくとも特有のペースで興奮を繰り返す。その自動的興奮のリズムは、洞房結節(70−80回/分)で最も速い。そのため、洞房結節が心臓全体の興奮のペースメーカーの役割を果たしている。洞房結節が障害された場合、より下部の心筋が替わってペースメーカーとなる(異所性ペースメーカー)。
また、心臓には交感系・副交感系双方の自律神経線維が分布しており、交感神経の刺激は洞房結節をはじめとした心筋細胞の興奮のペースを速くし、副交感神経の刺激では逆に遅くなる。運動やストレスなどで頻拍となり、逆に眠っているときなどは徐拍になるのは、この自律神経の作用によるものである。

【刺激伝導系の経路】


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刺激伝導系は、自発的興奮を繰り返す洞房結節から、心房、房室結節、ヒス束、右脚・左脚、プルキンエ繊維という順に伝達する。

それぞれの経路について詳しく観ていく

1:洞房結節

洞房結節は大静脈との境界部に存在する小さな組織である。活動電位は-40から-60と比較的浅い。洞房結節内の興奮伝導速度は遅く、0;02m/secである。
洞房結節の自動能は自律神経の影響を強く受ける。心臓交感神経の興奮により、自動興奮頻度が上昇する。反対に迷走神経が興奮すると、自動興奮頻度が低下する。

2:心房筋

洞房結節で発生した電気興奮は心房全体に広がる。心房筋細胞の活動電位は-80から-90ほどであり、心房内の興奮伝達速度は0.3-1m/sec程度であり、心房電気興奮は最終的に房室結節に達することとなる。

3:房室結節

房室結節は結節状の小さな組織であり、右心房の下方で心室中隔に近い部分にある。房室結節内の興奮伝導速度は遅く、0.02-0.1m/secであり、その結果、心房の収縮と心室の収縮に時間的遅れを生じさせる。この時間的遅れは、心房筋の収縮が完了し、房室弁を介する血液の心房から心室への流入が終了するために重要であり、心臓の効率的なポンプ機能の維持に寄与している。

何らかの理由で房室電動に要する時間が延長したり、房室電動が途絶していたりすると、いわゆる房室ブロックと言われる状況になる。


4:プルキンエ繊維

房室結節を通過した興奮伝導は、ヒス束と呼ばれる束状の組織に伝導し、中隔を下行しながら右脚・左脚に分岐する。
ヒス束に始まるこれらの繊維はプルキンエ繊維と呼ばれる。心室筋細胞と比して細胞系も大きく、伝導速度も速い。その結果、心室組織全般に素早く興奮を伝橋し、心室組織全体が同期して興奮収縮するので効果的な血液の拍出が可能になるのである。