つねぴーblog@内科専門医

アウトプットが趣味です。医学以外の事も投稿するやもしれません。名前は紆余曲折を経てつねぴーblogに戻りました

移転しました。

風疹はなぜ大流行したか

風疹についてのお話

↓これは以前ブームだった医療ドラマJINの麻疹・風疹予防ポスターです

 

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■風疹とはなんぞや

 

風疹とは風疹ウィルスによって引き起こされる感染症です。

小児や学童期の子供がよく感染し、症状としては後頭リンパ節腫脹や発熱、全身の発疹などがあります。俗に3日麻疹とも呼ばれ、あまり重篤せずに治るのが特徴です(もちろんまれに合併症を引き起こす可能性もあるので要注意)。

 

■風疹の何が怖いのか

 

症状だけで考えればたいした感染症でもなく、そこまで恐れることはありません。ただ一番厄介なのは妊婦が感染すると障害を持った子供が生まれてくる可能性が高いということです。特に、妊娠12週未満では胎児の体が作られる時期なのでこの時に妊婦が感染すると80〜90%の確率で先天性風しん症候群(CRS)という病気に新生児がなってしまいます(12週以降でも勿論リスクはあります)。

症状としては心奇形、難聴、白内障など非常に重篤です。更にやっかいなことにCRSには根本的な治療法がありません。

 

■妊婦だけ気をつければ良いのか?

 

妊娠している人は絶対にかかってはいけない病気ではありますが、それ以外の人は別に感染してもいいのか、というと決してそうではありません。何故ならくしゃみや咳といった飛沫感染で妊婦にうつしてしまう可能性があるからです。しかもこの風疹、症状が出ればマスクする、外出を避けるなど対策の方法もあるのですが、感染者のうちの1〜2割の人は症状が出ません(不顕性感染)。ですからいつの間にか自分が感染し、回りにいる妊婦さんにうつしてしまうということが起こりうるのです。特に妊娠している方が身近にいる人は本当に要注意です。

 

■ワクチン接種制度の落とし穴

 

幸いなことにこの風疹ウィルスにはワクチンが開発されています。

日本にあるのは主に3種類で

・風疹ワクチン

・麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)

・麻疹ムンプス風疹混合ワクチン(MMRワクチン)

です。2006年には麻疹風疹混合ワクチン2回接種が始まってます。逆に言うと、それ以前では2回ワクチン接種はされていなかったということになるのですが…以下の表を御覧ください。

 

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(日経ヘルスより引用)

 

上の表は世代によって風疹ワクチンを打っているかどうかを表したものですが、23歳以下では2回(もしくは1回)接種があるものの、34歳以上の男性については一度も接種していないという現状です。実際にワクチン接種を受けていない人々の感染率は非常に高い、特に男性(下図参照)。

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大阪府公衆衛生研究所より引用

 

では、なぜ世代によってワクチン接種率が違うのでしょうか??

 

■ワクチン接種制度の変遷

風疹ワクチンが導入されたのは1977年と結構昔なのですが、主な目的は先天性風しん症候群を防ぐことで女子中学生のみを対象とした予防接種でした。しかし上記の通り、それだけでは風疹の予防には充分でないことがわかり1994年下ら中学生の男女と1歳以上の男女に拡大されました。

このようなワクチン接種制度の変遷があるからこそ世代によって感染率が大きく異なってしまっているのです。妊婦やその周りの家族だけがワクチン接種をすればいいという問題ではなく、一見関係なさそうな人々もみなワクチン接種をすることしか風疹を防ぐ手段はないと考えられます(集団免疫)。

特に1990年4月よりも前に生まれた方は麻しん風しん混合ワクチン、もしくは麻疹ムンプス風疹混合ワクチンを接種するべきでしょう。

 

■なぜ風疹は大流行してしまったのか。

 

2013年には爆発的な流行が起こりましたが、その直接的な原因は何かわかりません。ただ考えられることとしては、2011年にアジアで流行した風疹を旅行者や出張中のビジネスマンが持ち帰ってきて、それが1つのトリガーとなったということです。更に別の要因としては、かつては風疹は5年に一度ぐらい大流行していたのですが、ここ10年ぐらいはその規模はどんどん小さくなっていったことが挙げられます。どういうことかと言いますと、風疹が流行らなければ風疹に対する抗体を持たない人がどんどん増えてしまうこととなり、逆説的ではありますが、流行がない時期が長くなれば長くなるほど、その後爆発的な流行が起こる可能性があるのです。今回の大流行は以前から国立衛生研究所が警鐘していたことなのですが、厚生労働省の怠慢?によって軽くスルーされてきたことに原因があると思います。

また何かありましたら更新します。