つねぴーblog@内科専門医

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移転しました。

HIV感染血液、ウィンドウピリオドの恐怖

エイズウイルス(HIV)に感染した献血者の血液が、日本赤十字社の検査をすり抜けて出荷され、患者数人に輸血されていたことが25日、分かった。厚生労働省と日赤は輸血された患者を特定しており、感染の有無を調査中。感染者の血液が輸血されたのは、2004年に日赤が対策を強化して以降は初めて。

 HIVに感染後約8週間は、ウイルスや抗体が微量で検査をすり抜けてしまう「ウインドーピリオド(空白期間)」と呼ばれる。日赤は1999年、ウイルスの遺伝子を増幅させて感染を見つける核酸増幅検査(NAT)を導入したが、03年にすり抜けによる献血で患者がHIVに感染した。04年、検査の精度を上げるため、50人の血液を一括して検査していた手法を改め、20人分に変更していた。

by毎日新聞

 

ウインドーピリオドっていうのは記事中にも少し書いてあるけど、ウィルスに感染してから日が浅くて体内でウィルスが十分に増殖してないため、献血するときに例えエイズに感染していてもそれに対する抗体がほとんど作られてなくて検査上は「陰性」となってしまう期間のことです。だから、献血する人自体も自分がエイズだなんて思ってないし、検査にも引っかからないからそのHIVの入った血液はそのまま輸血で用いられてしまうという恐ろしい話。

 

それで検査の精度を少しでも上昇させようとして登場したのがNAT(核酸増幅検査)という方法。遺伝子の一部の核酸(DNAなど)を取り出し、その核酸を倍々で増やしてその増えた核酸を検出するという方法。だからHIVに感染したばっかでちょっとしか抗体がなくても感染してることがわかるわけ。

 

NATが導入されてからHBV・HCV・HIVのウインドウ・ピリオドは大幅に短縮されたんだけど(HBVは約46日、HCVは約25日、HIVは約15日に短縮)、ゼロに出来るわけではない。したがって、これらのウイルスに感染するリスクのある性交渉などのあとは、輸血感染を防ぐために、しばらく献血は出来ない。

 

献血のアンケートに「複数のセックスのパートナーがいる」 という項目があってこれにYESと答えると献血は出来ないはずなんだけれども、例えば隣に恋人や家族がいるといった場合は嘘をついてNOとしてしまう可能性がある。その献血者がたまたまウィルス感染のウインドウ期間だったらすり抜けてしまう。