つねぴーblog@内科専門医

アウトプットが趣味です。医学以外の事も投稿するやもしれません。名前は紆余曲折を経てつねぴーblogに戻りました

移転しました。

日常に潜む鉛の危険性

鉛と聞いて皆さんは何をイメージするだろうか。
日常において鉛と接する機会はあまり多くないかもしれないが自動車のバッテリーやハンダ、塗料などにおいて鉛は使われており、仕事などで使用する方は注意が必要かもしれない。他の金属元素と異なり鉛は百害あって一利なしなのである。(ということもあってやはり規制の声は依然として強い。ハンダ付けの際は換気はしっかりしないといけないし、それどころか鉛フリーのものも広まりつつある。)

鉛は二つの異なった仕組みで毒性を発揮する。一つは酵素中のシステインの側鎖にある硫黄原子に結合し、酵素を変性させる。神経系で働く酵素はこの影響の標的となる。そのため低い濃度では鉛は注意力を減らし精神上の問題を引き起こしてしまう。

もう一つの毒性の仕組みは鉛が酵素中の活性部位にある必須金属と入れ替わってしまうことにある。例えば鉛はヘムを合成するための必須酵素中の亜鉛と入れ替わる。ヘムはヘモグロビンで酵素を運搬する部分に相当する。このような形である程度の鉛に曝されると治療が必要なほど貧血になる。鉛の毒性を治療する上で配意共有結合の形成はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の活性の鍵となる。EDTAはひとつの鉛イオンに六本の配位共有結合を作る。その結果できる化合物は水溶性になり鉛を尿中に運び出す。この治療の効果は尿中の鉛濃度を測定することでモニターできる。