つねぴーblog@内科専門医

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移転しました。

皮下注射と筋肉注射、静脈注射の違い

筋肉注射・皮下注射・静脈注射・動脈注射の違いをまとめてみました。

注射の歴史

現在のような皮下注射針が初めて開発されたのは今から150年ほど前の1853年。今のようなシリンジ型の注射針は17世紀の段階でロバートボイルとクリストファーウレンによって考案された。当時は注射針は先が凹んで尖っているわけではなく、皮膚を切開してから挿入するという手順で薬剤を注入したり、血液を採っていたようである。今では考えられないことですが。



・皮下注射、筋肉内注射、静脈注射の違い

人間の皮膚は表面から、表皮→真皮→皮下組織→筋層という構造になっており、皮下注射、筋肉注射、静脈注射はそれぞれどこの深さまで針を進めるかによって分類される。何故このような使い分けがなされるのかというと、薬剤を注射する深さによって吸収スピードが異なるからである。
皮下組織は血管が少ないため、吸収速度が遅いが、反対に筋層は血管に富んでいるので吸収速度もとても早い。そして静脈注射はそのまま血管系に入るので瞬時に全身をめぐる。吸収速度を相対的に表すと静脈注射:筋肉注射:皮下注射=10:2:1とも言われる。尚、注射剤の効果の持続時間は吸収速度の反対になるので、効果を持続させたい場合は筋肉注射、皮下注射が望ましいと言える。また注射の仕方の違いとして、皮下注射は皮膚に沿うように浅く指すのに対し、筋肉注射は奥にある筋肉に薬剤を届けないと行けないので45度から垂直に深く刺す。

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・動脈注射をしない理由
静脈注射は広く一般的に用いられるのに動脈注射は何故行われないのか。静脈注射の場合は血管に入った薬剤は心臓に戻り、大動脈を経て全身に均等に流れてくれる。一方で、動脈注射の場合はそこから先の末梢部分にしか薬剤が届かないからである。体内の血液の流れは動脈→毛細血管→静脈→心臓となっているが、動脈に入れられた薬剤のほとんどは毛細血管でトラップされてしまい、静脈から全身にいける量は微々たるものとなってしまうのである。抗がん剤治療などごく一部のみをターゲットとした治療の際は動脈注射をする場合があるが、それ以外において動脈注射を選択する理由ない。また、手技としても動脈は圧力が高いので静脈注射に比べると侵襲性が高く危険度も高いといえる。