多発性嚢胞腎で十分な水分摂取が推奨される理由
多発性嚢胞腎とは多数の嚢胞が腎臓の両側に生じて腎機能の低下、最終的には腎不全に至る遺伝性疾患である。日本における頻度は10万人あたり10人前後。
遺伝形式としては常染色体優性と常染色体劣性の2タイプがあり、常染色体優性タイプでは成人(特に40歳前後)に好発し、60代で約半数が腎不全に移行する。一方で常染色体劣性形式のタイプでは新生児期に好発し、2ヶ月で腎不全に至り死亡するため予後は非常に悪い。
診断にはエコーやCT、MRIで腎臓の両側に嚢胞を確認することが必要である。
症状としては肉眼的血尿、腰背部痛、高血圧などを呈する。
【治療】
腎機能や心機能をできるだけ維持するためにARBやACEIなどといった降圧薬が必要である。また、十分な水分摂取も推奨とされるがこれは何故であろうか。
バソプレシンによる細胞内のセカンドメッセンジャーcAMPが腎臓の嚢胞形成に関与していると考えられている。バソプレシンは集合管で水の再吸収を促進するホルモンでもあるので、十分な水分摂取によりバソプレシンの分泌を抑えることが可能である。この機序に着目してバソプレシンV2受容体拮抗薬の臨床研究が現在行われている。V2受容体をブロックすることによりcAMPの産生を抑制し、腎臓の嚢胞の増殖と増大を抑えることができるのではないかと期待されている。
高位精巣摘除術の高位とは何か
高位精巣摘除術とは精巣腫瘍に対する治療法および検査法である。
一般的に悪性腫瘍の治療において、腫瘍が局在しているならば外科的に、あるいは内視鏡的手技などによって切除することによって治療することが可能である。しかし、精巣腫瘍は手術によって容易に転移してしまうリスクがあるので、手術前に精巣からの血流を遮断しておいて転移を予防する必要がある。
その術式が”高位精巣摘除術”なのである。「高位」というのは一体何なのかという話であるが、これは鼠径管の辺りという意味である。
イラストは鼠径ヘルニア: 陰茎と精巣の病気: メルクマニュアル 家庭版より引用
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精巣は精索によって上方向に管を出していて、途中で鼠径管に入る。精巣腫瘍の転移を事前に防ぐために、精巣よりも高い位置、つまり高位である鼠径管のレベルで結紮して血流を遮断しておく。その後、精巣と精索をひとつの塊として摘出するのが高位精巣摘除術である。また、精巣腫瘍の治療においては組織型が重要であるので、摘出した精巣腫瘍の病理診断を行い組織型を決定する。なお、当然であるが精巣腫瘍においては生検は腫瘍細胞を播種させてしまうので禁忌となる。
粘血便の原因
粘血便の代表的な原因として以下のものが挙げられる
1、大腸炎
侵襲型の細菌であるサルモネラ、カンピロバクター、赤痢アメーバなどは粘血便の原因となりうる。一方で毒素型の食中毒である黄色ブドウ球菌やコレラなどは水様便を引き起こす。
2、薬剤性
合成ペニシリンなどの薬剤を使うことで菌交代現象によりクレブシエラオキシトカが増殖して粘血便をきたすことがある(出血性大腸炎)。
一方でセフェム系薬剤による菌交代現象である偽膜性腸炎ではクロストリジウム・ディフィシルが増殖して水様便となる。
3、炎症疾患
潰瘍性大腸炎では潰瘍を形成するので出血し、粘血便となる。同じ慢性炎症疾患であるクローン病も粘血便を呈するが、縦走潰瘍が目立たなければ水様便のこともある。