イヌリンとクレアチニンの違い
イヌリンとは生体に存在しない物質で、通常は糸球体で濾過され、尿細管で再吸収・分泌されずに排泄される。よって非常に正確に糸球体濾過量(eGFR)を測定することができる。
一方で、eGFRの測定として用いられるクレアチニンは糸球体で濾過され、尿細管で再吸収はされないが、分泌が若干ある。また、筋肉量によって尿管排泄量は変動する。
ここまで考えるとクレアチニンよりもイヌリンのほうが優っているように思えるが、イヌリンは前述のとおり生体内に存在しないのでイヌリンの点滴静注が必要であり、また測定法が煩雑なので臨床現場で用いられることはほとんどない。
そもそもイヌリンとは何なのかというと、キク科の植物の球根に多く含まれる果糖の重合体である。栄養学的には食物繊維に分類され、食べてもアミラーゼに分解されず消化管をそのままスルーしてしまう。イヌリンが腎機能測定の物質として選ばれたのはおそらく人体に存在しない+無害そう、といった所だろうか。
PAS染色とPAM染色、HE染色の使い分け
PAS染色とPAM染色、HE染色の違い
(腎組織の見方について)
■各染色法について
PAS染色:PASとはperiodic acid-Schiff(=過ヨウ素酸シッフ)の略。細胞や組織の糖鎖を染色し、好中球、基底膜、グリコーゲン、好酸球などが赤色に染まる。
PAM染色:periodic acid meth-enamine silver(過ヨウ素酸メテナミン銀)の略。糸球体・ボーマン嚢・尿細管の基底膜、メサンギウム基質が黒色に染まる。
HE染色:hematoxylin-eosin(ヘマトキシリン・エオジン)染色の略。
組織標本に最も使われる手法。腎組織全体、すなわち上皮細胞、基底膜、毛細血管内皮細胞全てが染まる。
■使い分け
・炎症細胞を見たいならHE染色(核の形態がよくわかる。逆に言えばそのぐらいしかわからない。
・細胞質を染めずに基底膜、メサンギウム基質、細胞の核だけを染めたいのならPAS染色(とりわけメサンギウム領域がよく見える)
・PAS染色のコントラストを更にはっきりさせたいのならPAM染色(基底膜が真っ黒になるのが特徴的)