SMA血栓症、SMV血栓症を疑ったら
◯大腸血管の解剖
◯腸管血行障害の分類として
1,上腸間膜動脈(SMA)血栓症…心房細動を有する患者が強い腹痛
2,上腸間膜静脈血栓症…心不全・肝硬変など静脈うっ滞を起こしやすい既往歴や血液凝固障害があり、緩徐に悪化する原因不明の腹痛
3,結腸虚血(虚血性腸炎)…便秘がちな動脈硬化患者に起こる突然の左即腹部痛
4、非閉塞性腸管虚血(NOMI)…急激な血圧低下や脱水に引き続き起こった突然の強い腹痛(心疾患既往や透析患者など)
がある。
◯腸管血管障害の検査
突然の腹痛、血便など上記疾患が疑われたら採血、造影CT施行。
採血ではWBC・CRP・CK・LDHの上昇を認める。また、乳酸の上昇による代謝性アシドーシスをきたすが早期には異常がないことも多い。
◯SMA血栓症のばあい
1,SMA領域の造影CT
(空腸〜横行結腸領域が浮腫っていたら、それが連続性か非連続性か確認する。連続性であればSMA血栓症やSMV血栓症が考えられる。一方で、非連続性であればNOMI(非閉塞性腸管虚血)が疑わしくなる。
健常者の造影CT:SMV径はSMA径よりも大きい。
しかし、SMA血栓症が起こると、血栓で行き止まりになった血管が拡張してSMAが大きくなる。よってSMA径がSMV径と同じぐらいの大きさになるのが一つの診断のポイント。
SMA血栓症では↓画像のように動脈を遠位に追っていくと途中で低吸収域(造影欠損)が出現する。
SMA血栓症は死亡率が30〜90%近くと非常に高い。
SMA閉塞症の場合、基礎疾患として心房細動や弁膜症など循環器疾患を合併している可能性が高い。治療は血栓溶解療法か開腹術による外科的な治療。造影CTの時点で腸管気腫像や門脈内ガス像など認めた場合は一刻も早く外科手術が必要。全小腸と右側結腸を含む大量腸管壊死が起きている場合は大量切除せざるを得ない。もし、腸管壊死が疑われない場合はIVRによる血栓溶解療法で治療場合なこともある。
2,SMV血栓症のばあい
死亡率は10〜20%と高いもののSMA血栓症よりかはマシ。症状としてもSMA血栓症に比べたら軽微で患者自身はケロッとしていることもある。鑑別診断として想起することが重要。
原因疾患として肝硬変や腹腔内感染症、外科手術後、何らかの凝固能亢進状態などが挙げられる。診断はやはり腹部造影CTが有用でSMV内血栓を同定する。腸管壁・腸間膜の浮腫様肥厚や造影不良、血栓部より末梢の静脈拡張像を認める。SMA血栓症と同様に造影CTにて腸管壊死が疑われる場合は外科的な手術が必要。
↓SMVの器質化血栓の例
3,IMA領域(いわゆる虚血性腸炎)
下行結腸〜直腸領域(好発部位は脾彎曲周囲やS状結腸)に浮腫像を認めたら結腸虚血
また追記します。
参考)
遠隔画像診断ナビ
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/5665