ポリニューロパチー(多発単末梢神経障害)の鑑別メモ
ポリニューロパチーは単ニューロパチーが複数存在する状態。
以下。鑑別をおおざっぱに記載(中…)
A、免疫性ニューロパチー
・ギラン・バレー
・フィッシャー症候群:運動失調、外眼筋麻痺、腱反射消失の3徴
・CIDP(慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー):2ヶ月以上にわたって慢性に進行。
左右対称性に四肢の遠位筋・近位筋ともに筋力低下、感覚障害が2ヶ月以上にわたって慢性に、あるいは再発・寛解を繰り返しながら進行する。四肢の深部腱反射は消失する。
・多巣性運動性ニューロパチー:感覚障害を伴わない左右非対称性の筋力低下、筋萎縮が慢性あるいは段階的に進行する。筋力低下、筋萎縮に加えて線維束性攣縮が診られることが有り、ALSとの鑑別が重要である。
・急性感覚性ニューロパチー:上気道炎や消化器症状jの先行感染に続いて、急性に四肢のしびれ感や深部感覚障害が起こる。ギラン・バレーやフィッシャー症候群類似疾患と考えられる。深部感覚障害メインで表在感覚低下や筋力低下は軽度。
・急性自律性感覚性ニューロパチー:急性の経過で自律神経障害、感覚障害を呈する。
・自己免疫性自律神経節障害:上述の急性自立性感覚性ニューロパチーの自律神経症状のみのタイプ。先行感染が多い。
B、血管炎性ニューロパチー
神経栄養血管に炎症が及び、虚血が生じることにより神経軸索障害を主体とする病態。
【原発性全身性血管炎】
巨細胞性動脈炎
結節性多発動脈炎
顕微鏡的多発血管炎
IgA血管炎
【二次性全身性血管炎】
膠原病(関節リウマチ、SLE、シェーグレン、全身性硬化症、皮膚筋炎など)
サルコイドーシス
ベーチェット病
感染症(HBV、HCV、HIV、CMV、ライム病、HTLV-1など)
薬剤性
悪性腫瘍
炎症性腸疾患
C,中毒性ニューロパチー
・有機物(二硫化炭素、有機リン、ピリミニール、臭化メチル、トリクロロエチレン)
・金属(鉛、有機水銀、ヒ素、タリウム)
・薬物(抗腫瘍薬(オンコビン、シスプラチン、タキソール)、抗感染症薬(メトロニダゾール、イソニアジド、suramin、クロロキン、アミオダロン、サリドマイド、プログラフ、スタチン、フェニトイン、炭酸リチウム)意外と入ってそうなものは赤字
D、感染性ニューロパチー
・ハンセン病ニューロパチー
・HIV感染症
・ライム病
・帯状疱疹
・ジフテリア
・CMV
E:全身疾患に伴なうニューロパチー
・糖尿病
・膠原病
・慢性腎不全
・甲状腺機能低下症
・先端巨大症
・小腸吸収障害(Celiac病など)
・アミロイドに伴なうニューロパチー
・ミトコンドリア脳筋症
・サルコイドーシス
・肝不全
・COPD
・熱傷や放射線などの物理的侵襲に伴うもの
F:栄養欠乏性ニューロパチー
・ビタミンB1欠乏:心不全と多発ニューロパチーを呈する。両側性に足の遠位部の痛みを伴うしびれで発症。進行して筋力低下や筋萎縮も目立つ。アルコール多飲者や偏食者、胃癌術後10年以上経過で多い。
・ウェルニッケ脳症:ビタミンB1不足によりウェルニッケ脳症とその後遺症であるコルサコフ症候群が引き起こされる。ビタミンB1(チアミン)不足で意識障害、眼球運動障害、小脳失調のウェルニッケ。
ウェルニッケが持続するとコルサコフ症候群。これは健忘症がメインで計算力や理解力は維持されるが、記憶力が著しく障害される疾患。
・ビタミンB6欠乏症:抗結核薬イソニアジド投与中にVitB6欠乏によりニューロパチーを起こす。
・ビタミンB12欠乏症:胃切除後や悪性貧血でみられるビタミンB12欠乏症において亜急性連合脊髄変性症に合併してニューロパチーを呈する。
・ビタミンE欠乏症:脂肪吸収障害に伴ってビタミンE欠乏が生じると、中枢神経系、特に小脳失調と共に後根神経節の脱落がみられ、位置覚・振動覚の低下、腱反射低下を呈する。
・ニコチン酸欠乏症:アルコール多飲者に多い。ペラグラ(皮膚炎、下痢、精神機能障害を呈する)。痙性対麻痺を呈する脊髄症状の他に、感覚障害優位の多発ニューロパチー、レイノー症状など大祭な症状。ニコチン酸の代謝産物の尿中排泄量を見て確定診断される。
・ビオチン欠乏症
G:遺伝性ポリニューロパチー
また追記します。