つねぴーblog@内科専門医

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第三世代経口セフェムが使えない理由

第三世代経口セフェムが使えない理由

 

フロモックス®やメイアクト®、セフゾン®、バナン®などのいわゆる第三世代の経口セフェム抗菌薬は開業医などでよく処方される薬剤あるが、実はほとんど役に立たないことで有名である。抗菌薬のカバー範囲の以前の問題として、腸管からの吸収が非常に悪く、十分な血中濃度を保てない。血中濃度が低いということは、標的の感染部位に到達できないということになる。

「抗菌薬適正使用生涯教育テキスト」によるとアベイラビリティ(腸管からの吸収率)は以下の通り↓

フロモックスのアベイラビリティは35%

メイアクトのアベイラビリティは16%

セフゾンのアベイラビリティは25%

バナンのアベイラビリティは50%

以上の通りバイオアベイラビリティは非常に低い。メイアクトは16%しか吸収されないので84%は便に排泄されてしまうということになる・・。

 

【誤った使用例】

・例えば蜂窩織炎などの軟部組織感染症であれば黄色ブドウ球菌活性の高い第一世代セフェムであるケフレックス®(セファレキシン)の方が望ましい。しかもケフレックス®のアベイラビリティは90%以上。

*一般的に軟部組織感染症の原因菌である黄色ブドウ球菌や連鎖球菌は第一世代セフェムが効果が強く、世代が進むに連れてグラム陰性菌への効果が高くなる一方でグラム陽性菌への効果が弱くなると言われている。

第三世代セフェムはグラム陽性菌を殺してくれないばかりか、無害なグラム陰性菌を無駄に殺してしまうので腸内細菌叢をいたずらに乱して下痢の原因や偽膜性腸炎(クロストリジウム・ディフィシル感染)になりうる。

 

・細菌性咽頭炎ならサワシリン®のようなペニシリン系のほうが有効でありガイドラインでも推奨されている。もちろん十分量を投与すれば第三世代セフェム内服でも効果が期待できるが保険適応内の容量では十分な血中濃度が維持できない。

 

・感冒症状(熱、咽頭痛、咳、鼻水)や急性副鼻腔炎や急性中耳炎などにも使われることがあるが、そもそも感冒はウィルス感染なので抗菌薬は必要ない。副鼻腔炎や中耳炎などであれば抗生剤を使わずに治ることも少なくないし使うとしてもペニシリン系が第一選択になる。

 

【一方、点滴薬の第三世代セフェムは有用】

注射薬であるセフトリアキソン®(第三世代セフェム薬)は市中肺炎、急性喉頭蓋炎、細菌性髄膜炎などの第一選択薬。内服薬と違って直接血液中に入れるので当然よく効く。

・例えば肺炎であればその重大な原因菌としてインフルエンザ菌、モラキセラ菌において奏功する。

・急性喉頭蓋炎でも原因菌はインフルエンザ菌が原因である事が多いのでセフトリアキソンを通常用いる。

・細菌性髄膜炎ではインフルエンザ菌や肺炎球菌が原因となりうるが、ペニシリン系は髄膜移行性が悪いので、髄液中によく移行してくれるセフトリアキソンが用いられる。