急性心不全におけるループ利尿薬の選択
急性心不全で利尿薬はいつ使うか
・急性心不全で体液貯留がある場合は基本的に利尿薬の適応となる。
・第一選択はフロセミド(ラシックス®)の静脈投与(内服では心不全だと吸収率が低下する)
*ループ利尿薬内服の場合のそれぞれの特徴
1,フロセミド:腸管吸収率10〜100%、作用時間6時間
2,トラセミド:腸管吸収率80〜90%、作用時間8時間
3、アゾセミド:腸管吸収率20〜30%、作用時間12時間
上記の通り、経口摂取可能であってもフロセミドの腸管吸収率は10〜100%と幅広い。心不全では腸管も浮腫んでいるために吸収されないので、フロセミドが効かない場合はトラセミドなど吸収率の高いものに切り替えるか、もしくは静脈注射で投与する。
・新規発症者ではフロセミド20mgのボーラス投与。もちろん尿量をモニターして反応を見て追加するかどうか考える。
・今まで心不全で利尿薬を内服していた場合はその1日量を追加でボーラス投与。
・フロセミドの投与量と予後は関係しない。が、利尿薬投与の遅れは死亡率の上昇と関連する。肺うっ血などの症状があれば改善するまで量を増やしていく。
・急激な利尿は循環血液量の減少により血液の濃縮・電解質バランスの崩壊により塞栓症や虚血性心疾患を誘発するのであくまで漸増的に量を増やしていく。
→低カリウム血症、低ナトリウム血症、高尿酸血症はモニター必要。
利尿薬があまり効かない場合は…
1,腸管がむくんでいて吸収されない場合
→上記の通り、腸管吸収率の高いタイプに切り替えかもしくは静脈注射
フロセミドからトラセミドに切り替えの場合はフロセミド20mgがルプラック®(トラセミド)4mgに該当する。
2,腎臓に到達していない場合
→うっ血がある場合は、心拍出量が落ちていなくても腎血流が落ちていることが有る。中心静脈圧が上がってると腎静脈圧も上がっており、尿細管から再吸収された水が間質から血管に入り込みにくくなり、すると間質圧が上昇してその間を流れる尿細管や毛細血管が圧排されて、糸球体ろ過量も低下させてしまう。
心機能が低下していて、腎灌流が低下している場合は利尿薬を投与しても腎臓に届かない。その場合は強心によって相対的に低い前負荷でも心拍出量の維持が必要。
静注強心薬ドブタミン(ドブポン®)2μg/kg/分の併用を考慮。(が、米国のガイドラインでは心原性ショックや臓器低灌流所見のない症例ではカテコラミン投与は有害ともされているので、その適応には慎重になる必要がある)。
また追記します。