つねぴーblog@内科専門医

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移転しました。

サルモネラの分類(腸チフスと食中毒)

サルモネラは人間の消化管内に常在する腸球菌であるが、一部のサブタイプは感染することで病原性を示す。

サルモネラは色んな分類の仕方があるが、臨床的には

腸チフスやパラチフスという重篤な疾患を引き起こすタイプ

食中毒性腸炎の原因となるタイプ

に大別される。

 

①の腸チフスやパラチフス菌はヒトの中でしか生きられないために基本的にはヒトヒト感染となる。故に感染者の便や尿に汚染された水や食物を介して感染が成立するために日本では少なく、主に東南アジアなどの発展途上国に多い。日本での腸チフスの大半は輸入感染症と言われている。

 

②の食中毒性腸炎を起こすサルモネラは人間以外の動物や自然界にも広く生存している。加熱不十分な肉、鶏卵やマヨネーズなどの経口摂取によって生じる。この他犬、猫、ミドリガメなどペットからの感染も少なくない。

 

典型的な症状は発熱、腹痛、嘔吐、緑色の水溶性下痢(時に血便)。潜伏期間は1−4日ほど。菌株により潜伏期間には差がある。キノロン系が治療として用いられうるが、耐性菌を生み出す、また腸内細菌叢を乱して治癒をむしろ遅らせるなどの意見もあり抗生剤は投与されないことが多い。適応としては幼児、高齢者、免疫不全者など。

 サルモネラは感染性腸炎の中でもかなり症状の強い部類で脱水、急性腎不全を起こすこともある。

 

【余談】サルモネラは細胞内寄生するが、マクロファージの貪食により取り込まれるだけでなく、自ら積極的に侵入する。

食中毒性サルモネラ(ネズミチフス菌など)は腸管の上皮細胞に感染して細菌性腸炎を引き起こすが、チフス菌やパラチフス菌はマクロファージに感染して菌血症を引き起こす。サルモネラは細胞内寄生体の一種であるが、この他細胞内寄生する菌といえば他に結核菌、レジオネラ、リステリアなどが知られている。結核やレジオネラなどは自然免疫のマクロファージに貪食されることで免疫の監視システムから逃れ、マクロファージ内で増殖することで病原性を発揮するが、サルモネラは面白いことに自分から積極的に細胞内に侵入する。(細胞のエンドサイトーシス能力を亢進させる働きがあるのでマクロファージのような貪食細胞だけでなく、腸管上皮細胞のような一般細胞内にも侵入することが出来る。