つねぴーblog@内科専門医

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アニサキスへのアプローチ@救急外来

アニサキスは寄生虫の一種であり、イカ、サバの生食を経口摂取することが発症すると言われているが、地域によって原因となる魚種に違いが有り、西日本や関東周辺ではサバ、イワシ、アジなど、北海道ではタラ、ホッケ、サケなどがアニサキスの原因として挙げられているようである。日本においては年間2000例前後。冬に多い。

 

【アニサキスの一例】

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画像参照:http://www.outdoorfoodgathering.jp/outdoorfood/%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%82%B5%E3%82%AD%E3%82%B9/

 

◯臨床経過:

・感染したアニサキスは胃壁内に侵入し、食後2−8時間で胃アニサキス症(上腹部痛、悪心)を引き起こす。小腸に侵入し腸管アニサキス症を発症することもある。腸管アニサキス症は食後6−48時間後に生じると言われており、小腸に入った場合はアニサキスが死滅するのを待つ(一週間ほどで死滅すると言われている)。

・腸炎との鑑別として下痢は少ない。

・限局した腸管壁肥厚と腸管内腔の狭小化で腸閉塞を起こすこともある(腸管アニサキス症の50%)。他にも食道や大腸にも侵入しうるが頻度としては高くない。

・すでにアニサキス抗原に感作されたヒトに再びアニサキスが侵入した場合,アレルギー反応が生じる。Ⅲ型アレルギー反応として胃の局所の激しい痛みが引き起こされる。胃アニサキス症と診断されるほとんどのものがアニサキスによる組織侵入ではなく、この3型アレルギー反応によるものである。また、Ⅰ型アレルギー反応として蕁麻疹やアナフィラキシーを起こすこともある。

 

◯検査

白血球の上昇が認められるが、好酸球は発症直後には上昇しにくい(30%程度しか有意に上昇しない)。特異的IgE抗体は発症早期より上昇し、特異度も高く診断に有用(が、時間外では検査できない)。

 

◯腹部CT

【胃アニサキス症腹部CTの一例】

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画像参考:http://www.jikeirad.jp/syourei/outi_2.html

【胃アニサキス症の一例】

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画像参考:上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ2 【症例 EE 7】

 

【アニサキス腸炎の腹部造影CTの一例】

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画像参考:Anisakiasis enteritis

アニサキス腸炎では粘膜の炎症がつよく粘膜下浮腫をきたす。粘膜と筋層が造影されこのような2重輪を呈する

 

◯治療

胃アニサキス症が疑われる場合は上部消化管内視鏡(鉗子で摘出)が推奨される。

内視鏡を行わない場合は上腹部痛が数日感持続する。(胃アニサキス症前例に内視鏡を行うかどうかは議論の分かれるところであるが、症状が持続していたらやる根拠となる。また腸管アニサキス症になると腸閉塞のリスクも有るためやって損はない)

アニサキスは一匹いたら複数匹いると言われており、見落とさないように注意。

小腸アニサキス症は経過観察でフォロー可能なことが多い。

また、薬としてはPPIやH2RAなどの制酸剤内服、蕁麻疹などのアレルギー症状があれば抗アレルギー薬内服。

 

また追記、更新します。