つねぴーblog@内科専門医

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移転しました。

”変行伝導を伴う上室期外収縮”とは何か

変行伝導を伴う上室期外収縮”とは何か

 

期外収縮についてイマイチな場合は↓エントリーも参照下さい。

tsunepi.hatenablog.com

 

 

上室期外収縮は本来QRSはnarrowであるはずだが、”変行伝導を伴う上室期外収縮”

ではQRSはwideになる。故に上室期外収縮でありながら、心室期外収縮と間違われることが有る。

 

変行伝導とは何か

心室の伝導系において不応期は右脚と左脚で異なる(不応期とは心筋の再分極過程で新しい刺激が来ても興奮できない時期のこと)。通常の心拍においては不応期は終わり正常に興奮が刺激として伝わり心筋を収縮させることが出来るが、正常な心筋収縮直後に期外収縮のような予期せぬ収縮が起きると不応期の影響を受けて興奮が伝わらないことが有る。

不応期の長さは伝導系により異なり、右脚>左脚前枝>左脚後枝の順に長い。であるから左脚では不応期が終わっていても、右脚で不応期が終わっていないような時に期外収縮が起こって刺激が発生すると、左脚では正常に伝導できるが、右脚では不応期によって伝導が障害されてしまう。するとQRS波は右脚ブロックと同じような波形になってしまう。この現象を変行伝導という。

 

右脚の方が変行伝導を起こしやすい

また、心筋の不応期の持続時間は先行する興奮の周期に比例して長くなる。よって1つ前の心周期のRR間隔が長い場合の直後では不応期もその分長くなり、右脚ではもともと不応期が長いのが異常に長くなり変行伝導となることがある。頻度で言うと右脚ブロック型の方が頻度としては多い。その原因としては前述の通り、右脚の不応期が長いことに加え、右脚の伝導路が物理的に長いため走行が障害されやすいことが考えられている。が、何らかの器質的な心疾患がある場合は左脚ブロック型の変行伝導にもなりうる。

 

■いつ変行伝導を伴う上室期外収縮を考えるか

 

・QRSのwideの期外収縮を認める(ぱっと見心室期外収縮っぽい)

・先行するP波あるいは正常と形の異なるP’波がある(心房から発生している為)特にT波に隠れているP’波が無いか注意する。

・脚ブロックのQRS波形があり、その直前のRR間隔が長い(脚ブロックは右脚ブロック型が頻度としては多い)

・QRSの初期ベクトル(initial vector)が正常収縮と同じ(上室期外収縮では全て心房から心室への房室結節を通っている、つまり生理的な経路を通っているのでQRSの最初の形は全誘導で正常である)