とある研修医の雑記帳

東京から大阪の医学部へ亡命して研修医になった人のブログ。勉強のまとめ、思いつきの考察、ちょっとした雑学などなど。アウトプットが趣味です。

術前のヘパリン置換とは何か

ヘパリン置換とは何か

 

脳梗塞既往や心房細動などの患者は血液が固まって血栓症を起こしてしまうリスクが有る。そこで血液が固まらないように抗血小板薬や抗凝固薬などいわゆる血液をサラサラにする薬を服用していることが多い。

抗血小板薬や抗凝固薬を服用している患者が外科手術や内視鏡的治療を受ける場合、一度出血してしまうと凝固系の働きが抑えられているために血液が中々固まらなく出血が持続してしまうリスクがある。そのリスクを抑えるためには抗血小板薬や抗凝固薬の服用をやめれば良いのだが、ワーファリンなどの薬は半減期が長く、手術の5日ほど前から服用をやめなければならない。抗血栓薬のない状態がたとえ数日であっても脳梗塞を発症してしまい、悲劇的な転機を迎えてしまいかねない。

 

この問題点を解決する方法がヘパリン置換(ヘパリン化)である。ヘパリンが他の抗血栓薬よりも勝っている点

・半減期が短い(他の抗血栓薬は数日〜2週間にやめなければならないがヘパリンは手術の4−6時間前まで継続できる)

・プロタミンという拮抗薬がある(ヘパリンの作用を急速に抑えたい場合に投与。ヘパリン1000単につきプロタミン10〜15mg。プロタミンはヘパリンと結合してヘパリンの作用を抑制するが、単独では抗血栓作用を示すので過剰投与では凝固が促進されてしまうので投与量には十分注意。)

・静脈から入れられるので速やかに調整が可能。

 

 

☆ヘパリン置換の流れ(ワーファリンの場合)

例えば抗凝固薬のワーファリンはビタミンK依存性の凝固因子の合成を阻害して効果を発現する。凝固因子に直接働きかけるわけではないので効果の発言が遅く、36〜48時間後に効き始め、また効果の持続時間も長い。ワーファリン服用患者が手術など観血的な処置を受ける場合は3〜5日前に服用を中止し、半減期の短いヘパリンに切り替える。ヘパリンの効果判定にはAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)を用いて、ヘパリンを投与する前のAPTTの1.5〜2.5倍を目安にコントロールする。手術の4−6時間前にはヘパリンをやめ、プロタミンで中和してから手術に望む(プロタミンはヘパリンとイオン結合し活性を抑制する)。手術が終了し、止血が確認されたらヘパリンを速やかに再開する。中止していた抗血栓薬は内服可能(飲水可能)になったら再開し、ヘパリンは中止する。ただし、ワーファリンに関しては作用するまで時間がかかるのでPT-INRが正常化するまでヘパリンを併用する。

 

☆他の抗血栓薬でも同じような流れでヘパリン化を行う。

抗血栓薬の中止時期は薬剤によって異なる。

アスピリン:7日前

チエノピリジン系(クロピドグレル、チクロピジン):14日前

シロスタゾール:3日前

ワーファリン:5日前

ダビガトラン、リバロキサバン:2日前

 

参考文献

「循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008年度合同研究班報告)」