急性嘔吐と遅発性嘔吐の違い(抗がん剤副作用)
化学療法による悪心、嘔吐は高頻度に出現する有害事象の1つである。悪心、嘔吐はその出現時期によって急性と遅発性に分けられるが発現機序も異なる。
【急性嘔吐】
抗がん剤投与数分〜数時間以内に発症。数時間後に症状のピークとなり、多くの場合24時間以内に消失する。主にセロトニンが関与する。
抗癌剤によって腸管のクロム親和性細胞からセロトニンが遊離する。遊離したセロトニンは消化管内にある知覚神経を刺激し、求心性に刺激が伝わり化学受容器引金帯(CTZ)や延髄の嘔吐中枢を刺激し、吐き気を引き起こす。
【遅発性嘔吐】
抗がん剤投与から24時間以上経過してから生じる。シスプラチンの場合は投与後2−3日後に症状のピークとなり1週間ほど症状が持続する。抗癌剤によって知覚神経からサブスタンスPが遊離し、NK1受容体を直接刺激することにより吐き気が誘発される。
悪心の有害事象グレード
G1:摂食習慣に影響のない食欲低下
G2:顕著な体重減少、脱水または栄養失調を伴わない経口摂取量の減少
G3:カロリーや水分の経口摂取が不十分;経管栄養/TPN/入院を要する
嘔吐の有害事象グレード
G1:24時間以内に1−2エピソードの嘔吐
G2:24時間以内に3−5エピソードの嘔吐
G3:24時間以内に6エピソード以上の嘔吐(TPNまたは入院必要)
*嘔吐の間隔が5分以上空いたものを1エピソードとする。
【参考文献】