つねぴーblog@内科専門医

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アナフィラキシー難治例でグルカゴンを用いる理由

アナフィラキシー治療でグルカゴンを用いる理由

 

虫の咬傷、造影剤など抗原暴露の後に皮疹や息苦しさなどを訴えるアナフィラキシー患者にはアドレナリンを筋注して対応するのがスタンダードであるがそれだけでは症状の改善を見ないことがある。アドレナリンを二度注射しても効果がない場合はグルカゴンの静脈注射が推奨されている。

 

グルカゴンとは膵臓α細胞から分泌される血糖を上昇させるホルモンであるが、なぜアナフィラキシー患者に使うのであろうか。

 

端的に言えばアドレナリンとは別の機序で細胞シグナルを活性化させることが出来るからである。アドレナリンとグルカゴンはそれぞれ別の細胞膜受容体に結合するが、その過程でセカンドメッセンジャーのcAMPを活性化させる。

細胞生物学的な話ですこしややこしいが機序を簡単に説明しておくと、

cAMPはプロテインキナーゼAを活性化→Na/Kポンプを活性化→電位依存性カルシウムチャネル活性化→細胞内カルシウム濃度低下させる。

その結果、膵臓ではインスリン分泌低下、心筋の収縮力増加、血管平滑筋の弛緩をさせる。

 

臨床的に覚えておくべきことは

・アドレナリン筋注が効かなかったらグルカゴン静脈注射も有効であるということ。(成人では1-2mg)

・アドレナリンが効きずらい背景としてはアドレナリン受容体の拮抗薬の内服を必ず確認すること(βブロッカー、αブロッカー、ACE阻害薬)

・アドレナリン投与の前にグルカゴンを投与してはならない(上述の通りグルカゴンは血管を拡張させてしまう作用もあるのでアドレナリンが投与されていない状態ではショックを引き起こすリスクが有る。あくまでアドレナリンが効かない時に用いる)