つねぴーblog@内科専門医

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ビグアナイドで乳酸アシドーシスになる機序

ビグアナイド薬(一般名:メトホルミン、ブホルミン)で乳酸アシドーシスになる理由

 

■ビグアナイドの作用機序:ビグアナイドはAMPキナーゼ(AMPK)を活性化させる作用があり、AMPKが肝臓での糖新生の抑制を抑制している。つまり、ビグアナイドはアミノ酸や乳酸の糖への変換(=糖新生)を抑制することで血糖値の上昇を抑制しているといえる。ビグアナイドはその他にも消化管からの糖吸収の抑制、末梢組織でのインスリン感受性の改善などの膵外作用も有する。

 適応:血糖コントロールに際して体重が増加しにくいので、肥満による2型糖尿病では第一選択となる。また、インスリン分泌を促進するわけではないので低血糖になるリスクは低い。

 

■ビグアナイドの副作用で乳酸アシドーシスになるのは何故か

教科書的にはビグアナイド=乳酸アシドーシスの危険性と必ず書かれているが、乳酸アシドーシスの発生率としては10万人あたり3人でありかなり頻度の低い副作用である。”メトホルミンの適正使用に関するRecommedation”によれば乳酸アシドーシスを起こしやすい患者には以下の特徴があるようだ。

・腎機能低下患者

eGFR<30未満の患者にはメトホルミン禁忌。またヨード造影剤の使用でeGFRが急激に低下することもあるのでヨード造影剤使用時も禁忌となる。腎機能が低下していると血中ビグアナイドの濃度が増えすぎてしまい、乳酸から糖への糖新生がほとんど行えなくなってしまう。すると血中に乳酸が蓄積し、乳酸アシドーシスとなる。

・脱水、シックデイの患者

脱水では循環血液量が低下して、それにより血中ビグアナイドの濃度上昇をきたす。その結果前述と同じ機序で乳酸が蓄積してしまう。

・心血管・肺機能障害、肝機能障害の患者

心機能や肺機能が低下していると酸素を全身に運搬することができなくなる。グルコースを異化してATPにするには解糖系、クエン酸回路系、電子伝達系を介さなければならないが、クエン酸回路以降の化学反応には酸素が必要な好気性解糖である。よって解糖系までしか分解されない糖分は乳酸へと変換されてしまう。