NOACとワルファリンの違いと作用機序
noacの作用機序とワーファリンとの違い
非弁膜症性心房細動(NVAF)の患者では左房内で凝固系が亢進してフィブリン血栓が形成され、それが飛んで脳梗塞を生じることがある。それを予防するために抗凝固薬であるワルファリンが用いられ、これまでの臨床研究的にはNVAFでの脳梗塞発症率を60%近く抑えることが出来ると言われてきた。ワーファリンは長い歴史を持ち、また効果としても十分な作用を示してくれる一方で、用量を設定するために定期的な血液検査が必要となるなどデメリットも存在する。
ワーファリンに加えて新たに登場したのがいわゆるNOAC(novel oral anti coagulants=新規経口抗凝固薬)である。
(*NOACは最近はnon-vitamin k antagonist oral anticoagulants=非ビタミンK阻害経口抗凝固薬の略として用いられることもある。)
■ワルファリンの作用機序
ワルファリンは肝臓のビタミンK依存性凝固因子(2、7,9、10)の合成を阻害することにより作用を示す抗凝固薬である。
【メリット】
半減期が36−42時間と長いために1日1回の内服で良い。
腎排泄ではないので腎機能低下患者でも用いられる。
【デメリット】
出血リスクが高い
薬剤干渉を受けやすいので新たに別の薬を飲み始めたらPT時間をの頻回の測定が必要
ビタミンKを含む食べ物はワルファリンの効果減弱させるので禁止(納豆など)
■NOACの作用機序
NOACはワルファリンと異なり、非ビタミンK依存性の抗凝固薬である。4種類のNOACがありそれぞれ作用ポイントは異なる。
・ダビガトラン:トロンビンを阻害
・リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン:第Ⅹa因子を阻害
【NOACのメリット】
・出血性合併症がワルファリンに比べると少ない(出血リスクの高い日本人では特に重要)
・他の薬や食べ物での薬剤干渉が少ない
・半減期が12時間と短い(効果が出始めるまでの時間が短い)
【NOACのデメリット】
・腎排泄での割合が大きいので腎障害のある患者では使えない
【ワルファリンとNOACの使い分け】
心房細動患者にはワルファリンとNOACどちらを使うべきなのであろうか。新規に抗凝固薬を選択する場合は出血性リスクの少ないNOACを第一選択にするというのが基本的な考えである。ただ、腎機能が低下している場合は腎排泄であるNOACは避けるべきであるし、またすでにワルファリンを服用していて、INRが安定し他の問題もない場合ではワルファリンをそのまま続けて良い。また、ただ、血圧コントロールが不良であったり出血リスクの高い患者ではNOACへ切り替える。