カルテSOAPの書き方
現在の医療現場では基本的にPOS(problem oriented system)という問題指向型システムの考えが用いられており、そのシステムに則ったカルテの書き方がSOAP形式なのである。これはつまり膨大な情報を持つ患者(身体所見、血液検査、その他画像所見、etcetc...)からプロブレムリストを作成して問題ごとにそれぞれ解決していこうというスタンスである。
S:subjective date=主観的所見
O:objective date=客観的所見
A:assessment=評価
P:plan=計画
S:主観的所見で書くべきこと(フルで書く場合)
Sは患者の主観的なことをかく。「お腹が痛い」「足がしびれる」など。家族を通してや前医で言われていることもSに書く。端的に言えば人から聞いた話、間接的に得られた情報はS。時間としては過去から現在に至るまで。主語は患者である。
・導入
年齢、性別、患者のバックグラウンド、主訴を記載して一目でどういう患者かわかるようにする。
・主訴
患者の言葉よりも医学用語で書いたほうがベター。お腹の痛み→心窩部痛
・現病歴
病気(症状)が発生してから今に至るまでの経過を時系列順に書く。西暦も忘れずに。
・症状の解析:OPQRS
1番の主訴となる症状をOPQRS方式で書く。
すなわち
O:onset(発症様式)急激なのか慢性なのか
P:palliative/provocative 増悪・寛解因子
Q:quality/quantity:症状の性質
R:region/radiation:場所・放散の有無
S:severity:症状のの強さ
T:time vourse:時間経過
・ROS(review of system)
症状を漏れ無く把握するために鑑別に関わる症状の有無を箇条書きで記載する。
例
ROS+:頭痛、嘔吐
ROS-:冷感、発熱、咳
・ナラティブ:
患者が今回の病気、症状をどう理解していて何を望んでいるのかなどをかく。
・併存症:今かかっている病気であっても今回の入院・外来には関係ない(介入しない)ものはここにかく。
例)胃潰瘍で入院の患者の白内障など
・既往歴:
これまでにかかった疾患をかく。
手術歴やアレルギー歴もあればここにかく。
・内服歴:
内服している薬を用量とともに記載。サプリメントや漢方も書く。
例)パーキストン100mg 1×
・家族歴:
遺伝病やリスク因子の把握のために血縁関係者の主な病気を書く。
例
父が脳梗塞、兄が高血圧
・生活歴:
タバコ、お酒をどの程度するのかをかく。本数や用量を忘れずに。
例)タバコ:1日20本を30年間、お酒:ビール1日500ml。
O:客観的所見で書くべきこと
【身体所見】
・全身状態:第一印象としての重篤感をかく
・バイタル:意識レベル(JCS/GCS)、血圧、呼吸数、SpO2、体温をかく
・全身診察:頭頸部、胸腹部をかく。場合によっては脳神経系、四肢、会陰部など必要に応じて書く
【検査所見】
・尿検査
・血液・生化学・凝固
・心電図
・胸部CT
ここは異常所見であれ、正常所見であれ診断において意味のある所見を記載する。例えば心電図でST上昇してたら絶対に記載しなければならないが、逆に心筋梗塞疑いでST上昇してなくて正常であってもそれは診断において重要な意味をもつ情報なので記載する。
その他検査項目は患者によってはいくらでもあります…。
A:アセスメントで書くべきこと
・プロブレムリスト
現時点で介入するべき問題を重要度順に列挙する。書き方は#記号の後に番号をふる。
例)
#1.心筋梗塞
#2.慢性的な腰痛
外来などで長期フォローする場合はプロブレムの発生した順に書くとわかりやすい。
プロブレムリストは今対応が必要なことのみを書き、診断されていても介入する必要のないものについては既往歴や依存症に記載する。プロブレムは患者の訴えをそのままではなく、鑑別診断を考えやすいものを書く。「足のしびれ」→「右下肢の感覚低下」など。また「〜病疑い」は他の疾患が除外されるまでは書かない。思い込みの原因となる。プロブレムには鑑別を絞る形容詞を付けることを意識する。「慢性の腰痛」や「急性の腰痛」とすれば鑑別はある程度絞られる。他にも「回転性めまい」や「動揺性めまい」などなど。入院中に発生したマイナートラブルなどは#aなどアルファベット記号で列挙する。マイナートラブルとは今回の入院とは関係のなく発生したと思われる症状や訴えである。後に介入の必要が出てきたらプロブレムリストに加える。
・簡単な要約
プロブレムの全体像を簡潔にまとめる。プロブレムで疾患名をあげていたならば、その根拠となるSやOを提示する。
・鑑別診断
最も疑うものまず書き、その後に他の鑑別を書いていく。長く書くと冗長になって読みづらいので、まずは結論である疾患を書き、その後に根拠を提示する(英文的)。その他の鑑別としては最低3つは挙げて、それぞれどのぐらいの可能性があるのか大雑把にでも記載する。(S/OやR/Oが使われることが多いがS/Oはsuspect of=可能性高い、R/Oはrule outで可能性は低いが除外しておきたいという意味になる。)
根拠の提示については←記号などを使うとシンプルにまとまって良い。
・方針
今後の検査や治療の方針を書いていく。SOAPのP(プラン)とは異なり、長期的な方針を書く。P(プラン)では具体的で短期的な方針を書く。
・補足
上記の項目では書ききれなかったが、意味のある情報はここで付け加えておく。
P(プラン)で書くべきこと
アセスメントの方針とP(プラン)は異なる。アセスメントの方針は大雑把な長期的な予定を書くのに対して、P(プラン)はかなり具体的な計画である。例えるならアセスメントの方針は「今度ぜひ遊びに行きましょー」とするとP(プラン)は「○月×日13時より〜集合して遊ぶ」のようにかなり具体的な行動計画である。プランもは治療や診断、家族説明などによって3つほどに分割するとわかりやすい。
・治療に関するプラン(根治療法、対症療法)
手術や薬剤治療に加えてリハビリや心理的なケアについてもここで触れる。
尚、薬剤は一般名ではなく商品名を書き、用量や用法も具体的に書く。薬剤の一般名が望ましくないのは他のコメディカルが分からないから(カルテは誰が見てもわかるという原則に立って記載する)。
・診断や経過観察に関するプラン
検査の予定などを具体的に書く。この他、身体診察でも何を観察していくか、看護師に何を観察してもらうかなども記載。
・患者教育や家族説明に関するプラン
病態や治療方針などのインフォームドコンセントの内容を書く。この他、治療の動機付けのための教育についてのことなども書く(ex.生活習慣病、糖尿病などで)。
参考文献:「型」が身につくカルテの書き方