つねぴーblog@内科専門医

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バビンスキー反射の方法とその機序(+動画)

バビンスキー反射とは

 錐体路障害(つまり上位運動ニューロン障害)を調べるための検査方法。足の裏をかかとからつま先の方向にこすることで誘発される。刺激するのは足の裏の外縁でゆっくりと踵から小指の方に向かってこすり、先端で母趾の方にカーブさせる。刺激するものとして先のやや尖った鍵が良いとも言われているが、一般的には爪楊枝や打鍵器の柄などが用いられる。上記のように刺激を与えると、健常者であれば母指は底屈するが、錐体路障害のある患者であると母指が背屈し、他の指は全て扇状に開く(開扇徴候)。母趾の背屈は錐体路徴候として重視されているが、他の指の開扇徴候の臨床的意義は不明(脳地図Area6の障害との報告も有る)。

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イラスト引用*1

 

バビンスキー反射陽性の解釈

・バビンスキー反射陽性は錐体路徴候を示唆するが、錐体路障害があっても必ずしもバビンスキー反射陽性となるわけではない。また、バビンスキー反射が出た時は逆に錐体路障害を示唆することになるが、不可逆的な破壊を意味するものではなく、一過性にバビンスキー反射が出ることもある(後に消失)。

・反射の誘発部位の拡大や、反射の程度が増強しているからといって錐体路障害がひどくなっているというわけではない。つまり錐体路障害の程度とバビンスキー反射の程度は相関しない。

・足の屈筋が麻痺してて、伸筋が健在であれば錐体路障害がなくてもバビンスキー反射陽性となる(偽陽性)。つまりバビンスキー反射は伸筋と屈筋の強さのバランスの結果出現する。

 

バビンスキー反射の機序

なぜ足の裏をこする事が上位運動ニューロンの障害のスクリーニングとなるのだろうか。

 

とある説その1:足の背屈現象は原始反射の一種であり、2歳以下の幼児では健常でも見られる反射である。しかし生後になって初めて作られる錐体路は背屈現象を抑制するために、成長とともにこの反射は見られなくなる。錐体路が障害されることによって抑制が解除され、幼児と同じように背屈現象が出現してしまう。

 

とある説その2 :一般的な話であるが、健常人の足底の表在刺激をすると足の底屈反応と背屈反応の両方が出現する。一見、足が底屈しているように見えても実際には底屈反応と背屈反応の両方が起こっており、相対的に底屈反応が優位である結果として足が底屈する。これは生理学的に次のように解明されている。底屈反応を引き起こす足底の部位が広く、また反応が起こる刺激の閾値が低い。一方で、背屈反応が起こる足底の面積は狭く、また閾値が高い。故に、バビンスキー反射をすると足が底屈することになるのである。しかし、上位運動ニューロンが障害されると背屈反応が起こる足底の面積が拡大し、また閾値も低くなることが知られている。その結果として、足底をこすると底屈よりも背屈の方が優位となる(つまりバビンスキー反射陽性)。

 

最後にバビンスキー反射の動画を健常なものと錐体路障害のものと2つ紹介します。

 

【バビンスキー反射陰性ver=健常人】


27 神経診察 Babinski反射の巻

 

【バビンスキー反射陽性=錐体路障害】(右足が陽性、左足が陰性)


Assessment - Reflex Exam - Comparing Babinski Response Present and Absent

 

参考文献:

診察と手技が見える

神経症候学を学ぶ人のために

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*1:交通事故110番_部位・等級別判例の解説