つねぴーblog@内科専門医

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全胞状奇胎と部分胞状奇胎の違い

■胞状奇胎とは何か

 

絨毛の栄養膜細胞が異常に増殖し、間質に浮腫が認められるものを胞状奇胎と呼ぶ。全ての絨毛が嚢胞化していれば全胞状奇胎、絨毛の一部が異常であれば部分胞状奇胎である。

 

■発生メカニズムの違い

 

全胞状奇胎と部分胞状奇胎の発生メカニズムは受精時の異常によって起こるという点は共通しているが、それ以外においては大きく異なる。

 

全胞状奇胎:ゲノム欠損卵子(核のない卵子)に精子が1つまたは2つが受精して発生する。つまり遺伝子としては男側のものしか持たないために雄性発生である。

構成する遺伝子によりホモ全奇胎とヘテロ全奇胎に分類される。

ホモ全奇体:精子が一つだけ侵入して23Xのゲノムとなり、これが卵子内で2倍化して46XXとなるもの。これが頻度としては圧倒的に多い。

ヘテロ全奇胎:23Xの精子が別々に2つ卵子の中に入り46XXとなるもの。もしくは23Xと23Yの精子がそれぞれ入り46XYとなるもの。

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部分胞状奇胎:正常卵子に2つの精子が受精して発生し、三倍体となる。

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イラスト引用:産婦人科の基礎知識

 

 

 

■疫学・検査

東アジアに多く、また高齢出産であれば有るほど胞状奇胎のリスクは上昇する。

 

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検査としてはhCGの値が重要になる。hCGは正常妊娠でも上昇するホルモンであるが、これを分泌しているのは絨毛の合胞体栄養膜細胞である。故に、栄養膜細胞が異常増殖している胞状奇胎においても正常妊娠同様上昇する。ただし、通常の妊娠であれば妊娠10週ごろにピークとなり、それから低下するが、胞状奇胎の場合は腫瘍性に増殖しているために高値を維持し続ける。

また、部分胞状奇胎では全胞状奇胎に比べて不正出血や妊娠悪阻が少く、稽留流産などと誤診されることも多い。

 

■治療・フォローアップ

治療は原則として子宮内容除去術を行う。もし患者が今後の出産を希望せず、比較的高齢であれば再発を予防するために単純子宮全摘術を行うことがある(詳しくは後述)。

胞状奇胎の問題点は奇胎を外科的に摘出しても後に絨毛がんや侵入奇胎となって再発するリスクがあることである。奇胎を娩出した後も経過をフォローしなければならないが、マーカーであるhCGが一定以下になるまでをフォローすることを一次管理と言い、更にその後にhCGが再び上昇するかどうかを監視し続けることを二次管理と言う。

侵入奇胎として再発した場合は単純子宮全摘術や単剤化学療法を行い、絨毛がんとして再発した場合は多剤併用化学療法を行う。

 

・侵入胞状奇胎との胞状奇胎の違い

侵入奇胎とは胞状奇胎が子宮筋層内や筋層の血管内に侵入したものを言い、全胞状奇胎や部分胞状奇胎とは独立した異なる概念である。