つねぴーblog@内科専門医

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移転しました。

逆説的アシドーシスとは何か

 糖尿病性アシドーシスの治療として、まずインスリンが用いられる。インスリンは標的細胞に働く際に血液中のカリウムを細胞の中に入れる作用があるので、それにより血液をアルカリに傾けることが出来る(一般的に、血中カリウムが上昇すればアシドーシスに、血中カリウムが低下すればアルカローシスになる性質がある)。ただ、インスリンを投与し過ぎると低カリウムになってしまうのでカリウム補充も必要。

 

インスリンによってもアシドーシスが改善できない時に初めて重炭酸ナトリウムを用いる。重炭酸ナトリウムには用いたくない理由がいくつか有るのだが、そのうちの1つが逆説的アシドーシスである。重炭酸ナトリウムを投与することで、H++HCO3- =H2O+ CO2の平衡が右に傾き、二酸化炭素が発生する。二酸化炭素は拡散能が高いので血液脳関門を超えて髄液中にも広がり、そこで高濃度になることにより平衡式が今度は左に傾き、H+とHCO3-が髄液中で多く作られてしまうことになる。つまり、血液中は無事アルカリになっても、髄液中はアシドーシスになってしまう(=逆説的アシドーシス)。

 

また、重炭酸ナトリウム投与の他のデメリットとして…

・血中が過度にアルカリになると酸素解離曲線が左方に移動してヘモグロビンと酸素が解離しにくくなる、つまり末梢組織に酸素が届きにくくなる。

・Naを含んでいるので、心不全や腎不全のような基礎疾患が有る方には使いにくい。

などもある。