つねぴーblog@内科専門医

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移転しました。

死体硬直のメカニズム

死体硬直はどのような機序で起こるのか

 

一般的に人は死んだ直後は体が柔らかく弛緩するが、やがて少しずつ筋肉が硬くなり死んだ時の状態で硬直する。この死後硬直を生理学的に表すならばアクチンとミオシンが重なりあって架橋を形成し、不可逆的に結合している状態とも言える。

 

生きている状態において筋肉はミオシンとアクチンフィラメントというタンパク質がそれぞれ引き寄せ合うことで筋肉は収縮することができている。もちろんこれらのタンパク質の動きにはエネルギーが必要であるのだが、そのためにATPという分子がADPに脱リン酸化されることによってそのエネルギーが供給されている。

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画像出典:http://www.yyokota.net/training-site/stretching1.html

 

■少しややこしい話をすると…

アクチンにはトロポニンとトロポミオシンというタンパク質が結合している。筋肉が収縮するときにはまず神経からの興奮が神経と筋肉の接合部まで連絡し、その後、筋肉内の筋小胞体からカルシウムイオンが放出されることでトロポニンに結合する。カルシウムイオンと結合したトロポニンは筋肉収縮を邪魔しているトロポミオシンを動かし、ATPaseが活性化され、ミオシンに結合しているATPが分解されたエネルギーでアクチンがミオシン側に引き込まれ、筋肉の収縮となるのである。その後、ADPがリン酸化されてATPになることで筋肉は再度弛緩することができる。

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画像出典:http://www.drugsinfo.jp/2010/04/02-224900

 

 

結局は人は死んでしまうと筋肉を収縮させるためのエネルギー源であるATPが得られなくなり、全身が硬直状態となる。死んだ直後はATPや筋小胞体のカルシウムは多少あるので生きている状態と同じように筋肉の収縮が行われるが、その後はADPの再リン酸化が行われないので収縮した筋肉は再び弛緩することが出来ずに固まってしまうということである。