耳せつ(外耳道の化膿性炎症)が夏に多い理由
耳せつの原因〜夏に多い理由
外耳道の軟骨部と骨部の位置*1
【耳せつとは】
外耳道は上イラストのように軟骨部と骨部に分けられる。軟骨部には皮下組織に皮脂腺と耳垢腺があるが、骨部には腺構造がなく、皮下組織の上に扁平上皮細胞が覆っているだけである。
外耳道の軟骨部で生じる限局性の化膿性炎症を耳せつと呼ぶ。一方で、骨部では炎症は起こりにくいが薄い皮下組織のために広がりやすくびまん性の炎症となる。症状は耳の痛みにとどまらず、頭や歯などに放散することもある。
【なぜ夏に多く発生するのか】
耳せつは一般的に水泳、入浴、耳掻きなどの刺激が誘因となり耳垢腺や皮下腺への感染によって生じる。夏は外耳道に汗をかきやすいだけでなく、プールや海水浴で水が耳の中に入ることが多い。特に、水分でふやけた皮膚は細菌にとっては非常に増殖しやすい環境になるので高温多湿な環境で増殖しやすくなる。
また、他の理由としては抗菌蛋白の働きが抑えられるためでもある。
耳垢腺からは細菌の増殖を抑えるβディフェンシンなどの抗菌タンパクが含まれていることが知られている。これらの抗菌物質には至適pHがあり、弱酸性環境下で最も効果を発揮する。しかし、水が入るとpHがずれるので抗菌蛋白が機能しにくくなり感染が起こるとの主張もされているようである。
耳せつの原因としては黄色ぶどう球菌が代表的。
必要に応じて抗菌薬軟膏やステロイド軟膏の塗布、抗菌薬を点耳する。
*1: 耳の掃除 | はしもと小児科HPより引用