右房負荷と左房負荷の心電図
✅正常のP波
洞調律の時は心房の興奮が前額面上では右上から左下に向かう。故に、心房興奮の平均ベクトルは0度〜90度の間であり、正常ならP波はⅠ、Ⅱ、aVFで陽性、aVRで陰性となる。水平断面上では心房興奮は右から左に向かうのでP波はV2〜V6で陽性である。
✅右房負荷のP波
もし右房拡大があるとⅡ、Ⅲ、aVFのいずれかでPの高さが2,5mm以上(肺性P)またはV1,V2で先鋭増高P(2mm以上)(右心性P)となる。心房の興奮はP波となって現れるので、心房が肥大したらP波は高くなるはずである。心房の真上からの誘導、つまりV1誘導に注目するのが一般的である。洞結節は右房にあるので右房の興奮の後に左房の興奮が心電図に記録される。
右房が肥大すると、P波の前半の山が高くなる(P≧0.25mV)=右房性P波という。
左房の興奮で下に向かっているのはV1誘導から見たら遠ざかっているからである。
(病気が見える:循環器P36より)
○右房負荷の心電図の一例
参考:Right Atrial Enlargement • LITFL Medical Blog • ECG Library Basics
右房負荷の心電図の定義は0.25mV以上のP波の増高。
肺高血圧症に合併することが多いので肺性P波とも呼ばれる。
特にⅡ・Ⅲ・aVf誘導で認めることが多い。
○P波像高となるメカニズムと原因
右房圧力の上昇、右房の容量負荷によって右房が拡張してその起電力が上昇するためP波が増高する。
右房負荷の原因疾患:原発性肺高血圧症、COPD、肺塞栓など
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✅左房負荷の心電図のメカニズム
洞結節は右房内にあるため、心房興奮はまず右房興奮から始まり、右房と左房とを連絡するBachmann束(右房と左房を連絡している)を通って左房に伝わる。
左房に負荷がかかって左房拡大が起こっていると、心房の興奮終了に時間がかかるのでP波の幅が広くなる。
左房が肥大すると、P波の後半が陰性となり、二相性となる。
左房の興奮は、V1からみると遠ざかる方向にあるので左房が強く興奮すると、下向きの振れが強く出ている。V1誘導でP波が幅、深さともに1mm以上の大きな下向きの振れがあると左房性P波という。
(病気が見える:循環器P36より)
○左房負荷の心電図の一例
○左房負荷の診断
P波の幅が0.12秒以上の時に左房負荷を疑う。
V1誘導のP波が2相性ないしは陰性を示す場合は、陰性相の幅(秒)と振幅(mm)との積(P terminal force)の絶対値が0.04以上の場合は左房負荷と診断する。
○左房負荷の原因
→僧帽弁閉鎖不全症(MR)、僧帽弁狭窄(MS)など
また追記します。