抗真菌薬の作用機序
真菌の3つの細胞構成成分に作用する。
真菌は哺乳動物細胞には存在しない細胞膜ステロールのエルゴステロールを合成する。アゾールは真菌細胞の小胞体でエルゴステロールの合成を阻害する。アムホテリシンBのようなポリエンは細胞膜のエルゴステロールに結合し、細胞膜を破壊して機能を失わせる。フルシトシンは真菌細胞内で5−フルオロウラシルに変換され、DNA合成を阻害する。
歴史としては…
もともとはアムホテリシンが唯一の治療薬。しかし強い毒性のため使用が制限。
後にアゾール系が次世代の真菌薬として登場。アゾールは副作用が少ないのにアムホテリシンB並みの臨床作用があり普及。
■アムホテリシンBの作用機序
この薬剤はステロールに親和性があるために治療効果と同時に副作用を引き起こしていると考えられる。
アムホテリシンBは真菌の細胞膜ステロールに結合することで、小孔形成機序を通じて細胞膜の透過性が亢進し、その結果、必須細胞内成分が流出して真菌は死滅する。アムホテリシンBの副作用としては腎障害、肝障害、サイトカインストームといった急性全身反応を引き起こす。
■アゾール系の作用機序
アゾールは全て類似の作用機序を有している。ラノステロールをエルゴステロールに変換する際に関わる酵素、真菌のシトクロムP45014αステロールでメチラーゼはアゾールによってよく壊死される。その結果、エルゴステロールの合成が減少するため、真菌は細胞膜を維持することができずに死滅する。アゾールは真菌の酵素のみを完全に選択するわけではなく、人の肝臓シトクロムP450もある程度抑制してしまう。
■フルシトシンの作用機序
フルシトシンは真菌細胞の細胞膜のみに存在するシトシンパーミアーゼによって行われる。人間の細胞にはこの酵素は無いのでフルシトシンは真菌のみに取り込まれることになる。細胞内でフルシトシンはシトシンデアミナーゼによって癌の化学療法で用いられる代謝拮抗薬である5ーフルオロウラシルに変換され、続いて5−FdUMPというDNA合成や細胞分裂を阻害する物質に変換される。