Ⅲ音とⅣ音のメカニズム
■正常な心音について
正常な心臓において心音はどのように現れるのか
まずは1音と2音に注目して見ていくと…
1、心房収縮:
心房に残っている血液を心室に送り出す
2、僧帽弁・三尖弁閉鎖:
心室圧が心房圧よりも高くなると僧帽弁と三尖弁が閉鎖する=この音がⅠ音
3,大動脈弁・肺動脈弁開放
心室圧が動脈圧よりも高くなると肺動脈弁と大動脈弁が開放する。
4,大動脈弁・肺動脈弁閉鎖
動脈圧が心室圧よりも大きくなると大動脈弁と肺動脈弁が閉鎖する。この音がⅡ音
5,僧帽弁・三尖弁開放
全身から血液が戻って心房圧が心室圧よりも大きくなると三尖弁と僧帽弁が開く。
6、心室拡張
心房に溜まっていた血液が心室に流入する。充満は初期に早く、その後心室容積は少しずつ増加していく。
という流れである。
端的にいうと、
1音=僧帽弁と三尖弁が閉じる音
2音=大動脈弁と肺動脈弁が閉じる音
■3音、4音について
それでは3音と4音というのは一体何のことなのか、今度はⅢ音とⅣ音に注目して拍出の流れを見ていくと…
1、心房収縮:
心房に残っている血液を心室に送り出す。
この時、心室拡張不全や心房過剰収縮がある場合、心室壁を進展させることができず、衝撃音を生じる。=この音がⅣ音
2、僧帽弁・三尖弁閉鎖:
心室圧が心房圧よりも高くなると僧帽弁と三尖弁が閉鎖する=この音が1音
3,大動脈弁・肺動脈弁開放
心室圧が動脈圧よりも高くなると肺動脈弁と大動脈弁が開放する。
4,大動脈弁・肺動脈弁閉鎖
動脈圧が心室圧よりも大きくなると大動脈弁と肺動脈弁が閉鎖する。この音がⅡ音
5,僧帽弁・三尖弁開放
全身から血液が戻って心房圧が心室圧よりも大きくなると三尖弁と僧帽弁が開く。
6、心室拡張
心房に溜まっていた血液が心室に流入する。充満は初期に早く、その後心室容積は少しずつ増加していく。
この時、心室拡大があると、心室壁の伸展性が低下していて、急速流入期の血流による衝撃を更なる進展によって抑えることができずに衝撃音を生じる。このことをⅢ音という。
まとめると…
・3音4音共に基本的には病的。
・感度が低く、特異度は高い。心不全でも聞こえないことの方が多い。
・共に拡張期に聞こえる
・心尖部で聞こえやすい→左45度側臥位で、聴診器のベル形で聞く。
3音は左房から左室に流れて壁に強くぶつかる音
故に、僧帽弁閉鎖不全症や心室中隔欠損など血流の多い病気
心不全や心筋症などで左室が硬い場合におこる。
4音は左房から左室に血液が流れにくい状態。
故になんとか流れ用として左房が頑張って収縮する音が4音である。
原因としては左室圧が上昇している病態、例えば心不全による鬱滞で左室圧が上昇している時、あるいは大動脈弁狭窄症や閉塞性肥大型心筋症などで狭窄のある場合。
追記その1
☆健常人でも3音が聞こえる理由
ちなみに、健康な若年者でも3音は聞こえることがあるが、これは血液の赤血球濃度が低いからである。加齢とともに濃くなり粘稠度はますが、子供の頃は特に低い。故に血液はサラサラしていて血流スピードは早くなり、3音が聞こえることがある。この場合もちろん生理的であり異常ではない。
追記その2
☆心不全の3音、4音の感度と特異度
JAMAに掲載されている論文によると3音、4音の心不全に対する感度特異度は以下の通り。(JAMA.2005 Oct 19;294(15):1944-56)
3音:
感度:13%、特異度99%、陽性尤度比11
4音:
感度:5%、特異度97%、陽性尤度比1.6
よって3音、4音が聞こえれば心不全とほぼ言えるが、聞こえないからといって心不全ではないとはいえない。検査方法が限られていた昔は有用な身体所見であったかもしれないが、今では胸部レントゲンや心エコー、採血BNPなど代わりとなる心不全の評価方法があるので臨床現場でのインパクトは大きくない(と個人的には思う)。