つねぴーblog@内科専門医

アウトプットが趣味です。医学以外の事も投稿するやもしれません。名前は紆余曲折を経てつねぴーblogに戻りました

移転しました。

ATRAの作用機序

ATRA(all-trans retinoic acid)とは全トランスレチノイン酸の経口製剤であり、APL細胞の分化を誘導することができる。

 

APL(急性前骨髄球性白血病)について…

特殊な染色体異常t(15;17)のため、PML/RARαキメラ遺伝子を有する急性骨髄性白血病。DICを高率に合併する。(FAB分類ではM3に相当)

 

APL発症の原因…

RARαはレチノイン酸の核内受容体であり、そのリガンドであるレチノイン酸と結合することで、前骨髄球の分化に関わる遺伝子の転写を活性化する。正常では、RARαはコリプレサーによって転写活性が制御されているが、リガンドであるレチノイン酸の存在下で、コリプレッサーがはずれ分化を促進する。

しかし…!

APL細胞がもつPML/RARαはコリプレッサーとの結合性が高く、レチノイン酸の存在下でも結合が外れず、転写を活性化できない。そのため、骨髄球以降に分化できず、前骨髄球が増殖してしまう。

(コリプレッサーとは…遺伝子発現の際に抑制的に働く転写調整因子をリプレッサーと言い、その中でもDNAには直接結合せず、他のタンパク質との相互作用を介して発現を制御するものをコリプレッサーという。)

 

 

レチノイン製剤であるATRAを投与することによってAPL細胞は成熟好中球に分化し、数日で寿命を迎えて無事にアポトーシスされる。ATRAの素晴らしいところはAPLに合併するDICもうまくコントロールできるであり、現在ではAPLはもっともコントロールしやすい白血病になったと言われている。