補体価低下の原因と鑑別、その覚え方
補体とは抗原抗体反応で特異的に活性化されて細胞傷害作用を発揮するタンパクである。疾患により上昇する場合と低下する場合の2パターンあるが、上昇する病態としては炎症性疾患(感染症、熱傷、悪性腫瘍、外傷)などや一部の膠原病(SLEとMRA以外)がよく知られている。
補体が減少するケースとしては、
・補体の産生低下
・補体の消費亢進
のどちらかの病態が元となっている。
■補体の産生低下の疾患
・重症肝障害
(補体成分の大部分は肝細胞で合成されるので肝臓が障害されていると補体の産生能力も低下する。具体的には肝硬変、劇症肝炎、慢性肝炎などである。)
・先天性産生低下
補体成分C1〜C8のいずれかが欠損すると先天性に補体価が低下している。
原発性免疫不全症、SLE、腎炎、若年性関節リウマチ、ナイセリア易感染性、遺伝性血管神経性浮腫などが知られている。
■補体の消費亢進する疾患
補体系が体内で活性化されると補体成分が消費されて補体低下となるわけであるが、補体の消費を代償するために肝細胞で補体の産生も亢進されることもある。つまり、それぞれの疾患、発症してからの時期によって補体の値が上昇しているか、低下しているかは異なるのである。例えばSLEでは全身性に高度の免疫複合体が形成されるため補体価は著しく低下する一方、関節リウマチは炎症が強いために補体は増加傾向にある。そしてベーチェット病では病初期には補体価が低下し、進行すると補体価が上昇する。
これらをいちいち全て記憶するのは大変なので、ゴロを紹介。
☆腎臓疾患で補体価が低下する疾患の語呂合わせ
包帯を糸でループに巻くぞう
包帯を=補体低下
糸で=急性糸球体腎炎
ループに=ループス腎炎
巻くぞう=膜性増殖性糸球体腎炎
☆腎疾患意外で補体価が低下する疾患
ほっといてくれ スレた悪の愛は完結だい
ほっといて=補体低下
くれ=クリオグロブリン血症
スレた=SLE
悪の=悪性関節リウマチ
愛は=AIHA
完=肝硬変
結=血清病
だい=DIC