つねぴーblog

元とある研修医の雑記帳。アウトプットが趣味です。医学以外の事も投稿するやもしれません。

オペロン説とは

オペロン説とはいったい何か。(プロモーター、エンハンサー、調節遺伝子tec・・・)

まず、ラクトースオペロンを例に背景からざっくりお話しします。

大腸菌という非常に有名な細菌がいますが、彼らはラクトース分解酵素という遺伝子を持っています。ラクトースというのは2糖類でこれを分解するとグルコースとガラクトースになります。面白いことに、大腸菌は自分の周りにラクトースがあるのかどうかを”知って”いて、ラクトースが周りにあるのならラクトース分解酵素を合成して、ラクトースを分解してグルコースをつくりだし、それをエネルギー源とします。一方、ラクトースが無いのならラクトース分解酵素をわざわざ作りません(ラクトース分解酵素の遺伝子は持っているにもかかわらず)。これはつまり、非常にエコなシステムであると言うことが出来ると思います。タンパク質を遺伝子から合成するのにもエネルギーが必要ですので、まわりにラクトースがあるのなら当然のように分解してエネルギーとしますが、ラクトースがないのにもかかわらず分解酵素を作ってもエネルギーの無駄遣いです。それを避けるためにラクトースがまわりにある時だけラクトース分解酵素を作るのです。なんと賢いのでしょう。

ではいったい、どのような仕組みでこれが実現されているのでしょうか。




DNAには実際に酵素タンパク質のアミノ酸配列を支配する構造遺伝子以外に、RNAポリメラーゼが結合する領域(プロモーター)、また構造遺伝子の転写を調節する物質(リプレッサー)の合成を支配する調節遺伝子および、リプレッサーが結合する領域(オペレーター)などがあります。


登場人物が多すぎるのでちょっと整理すると

構造遺伝子・・・タンパク質の構造についての情報をもつ遺伝子.遺伝子の転写を調節する機能をもつ調節遺伝子に対して使われる言葉です。

RNAポリメラーゼ・・・別名RNA合成酵素。DNAに結合してRNAへ転写する役割を持ちます。

プロモーター・・・DNAにある領域のことで、ここにRNAポリメラーゼが結合します。プロモーターというのは促進する者みたいな意味です。プロモーションビデオ(PV)とかありますがこのプロモーションとニュアンス的には同じで転写を促進するための領域です。

こんな領域なんのためにあるんだろう・・?と考えてしまうかもしれませんが、RNAポリメラーゼになった気持ちで考えてみて下さい。
あなたの役割は膨大の長さのDNAから必要な遺伝子(つまり構造遺伝子)を探し出してそれを転写することです。

DNAってめちゃくちゃ長いです。その中にぽつぽつと点在している遺伝子を転写しろだなんて無茶ぶりやろ!!と思わず突っ込みを入れたくなるかもしれません。そんなときに非常に心強いのがプロモーター領域なんです。これは基本的に各遺伝子の上流(つまり近く)に位置していて、RNAポリメラーゼとめちゃくちゃ強く結合できる構造をしています。RNAポリメラーゼはそこからどんどんと遺伝子の転写をしていくことが出来るのです。つまりポリメラーゼがないとほとんどのRNAポリメラーゼは目的を果たせず迷子になってしまうのです。

リプレッサーとは・・・調節遺伝子から作られた調節タンパクのことです。何を調節するかって構造遺伝子を転写させるかどうかを調節しています。どのように調節するのかというと、オペレーターと呼ばれるDNA領域に結合してRNAポリメラーゼの転写を邪魔します。


通常、調節遺伝子から作られたリプレッサーがオペレーターに結合し、RNAポリメラーゼがプロモーターに結合するのを抑制しているため、構造遺伝子は転写されず、ラクトース分解酵素も合成されません。

しかし、培地にラクトースを添加すると、ラクトースから生じた誘導物質がリプレッサーと結合し、リプレッサーを不活性型に変化させる。その結果、リプレッサーはオペレーターと結合できなくなる。すると、RNAポリメラーゼがプロモーターに結合し、構造遺伝子を転写させ、ラクトース分解酵素が合成可能になるわけです。

構造遺伝子とその発現調節に関与しているDNA領域(調節遺伝子、プロモーター、オペレーター)をあわせてオペロンといいます。
そしてこのような仕組みで遺伝子発現がコントロールされているという考え方をオペロン説というわけである。ちなみに提唱者はジャコブとモノーの2人で当時としては非常に画期的でノーベル賞を受賞されました。

おまけとして、トリプトファンオペロンのお話も書いておきます。


大腸菌はエネルギーを効率よく確保するためにラクトースオペロンという遺伝子調節能を持っていましたが、トリプトファンオペロンというこれまた少し趣の異なる遺伝子調節機構も持っています。
トリプトファンというのはアミノ酸の一種でタンパク質合成に欠かせないので大腸菌としては常に一定の量をキープしておきたい物質でもあります。
よって、周りにトリプトファンがないのならばトリプトファンを合成し、周りに十分あるのならば合成をストップさせようとします。既にあるのに合成しまくるというのはエネルギーの無駄遣いですからね。考えてみるとラクトースオペロンと全く逆のシステムであることがわかると思います。ラクトースオペロンでは周りにラクトースがあればラクトース分解酵素をつくり、ラクトースがなければ分解酵素を作るのをやめていたのですから。

では分子的にはいったいどのようなメカニズムでこれが成立しているのでしょうか。


まず、周りにトリプトファンが無い状態の時・・・
調節遺伝子からリプレッサーを作り出しますが、これは不活性型でトリプトファンオペレーターとは結合できません。よってRNAポリメラーゼは何の問題も無くプロモーターへの結合し、下流にある構造遺伝子(つまりトリプトファン合成酵素)を転写してトリプトファンが合成されます。

しかし、培地にトリプトファンを添加すると不活性型のリプレッサーがトリプトファンと結合し、活性型のリプレッサーとなります。すると、これはオペレーター領域に結合でき、RNAポリメラーゼがプロモーター領域に結合するのを邪魔します。よって構造遺伝子の転写は抑制され、トリプトファン合成酵素はつくられません。