寒いところにいると疲れるのは何故?
「寒いところにいると何もしてなくても疲れるのはなんで?」という生徒からの質問に対する僕なりの回答です。
■体温維持のメカニズム
恒温動物の体温調節は、「寒い時に体を温める」という機構と、「熱い時に体を冷やす」という機構があります。基本的には寒い時に体をいかにして温めるかという方が重要です。
体温を保持するには2つの方法があり、1つは、体表面からの熱放散を抑制すること。
もう一つは体内での熱産生を促進することです。
人の中で温度を感知する中枢は間脳視床下部という場所にあるのですが、人の血液が少しでも冷えれば瞬く間に視床下部はそれを把握して体全体に体を温めるようにと指揮をとります(オーケストラの指揮者さながら)。
■熱を逃さないようにする
まず、全身に巡らせている交感神経を介して次のことをします。
1、皮膚血管を細くします。血管が細くなれば体表から奥深いところに閉じこもる感じになり、熱が体から逃げにくくなります。
2、立毛筋を収縮します。所謂「鳥肌が立つ」ということです。立毛筋とは平滑筋の一種であり、収縮によって毛は垂直方向に立って周囲の毛孔部は少し隆起します(祖先の名残)。
3、汗の分泌が減少させる。汗を出すことによって体を冷ますことができるので、汗をストップさせて体温維持に努めます。
■熱をつくり出す
上記の3つは言わば熱を逃がさないような工夫です。言わば守りの姿勢。
そして、これだけではありません。
ホルモンを分泌することによって熱をつくり出すのです。
グリコーゲンをグルコースにしたりするのは本来運動をしたりしてエネルギーが要る時ですが、寒い時も同じ反応を起こしてエネルギーを産生するのです。運動時は副産物として熱が生じていましたが、寒い時は熱こそが主産物なのです。
具体的には…
交感神経によって、副腎髄質からアドレナリンの分泌が促進されます。更に、刺激ホルモンによって、甲状腺からのチロキシン、副腎皮質からの糖質コルチコイドの分泌が促進されます。これらのホルモンは代謝を促進することによって熱産生を促進し、体温を上昇させます。
まとめると…
アドレナリン:グリコーゲンをグルコースに分解
チロキシン:アドレナリン受容体を増加させて脂肪細胞の脂質分解、肝臓のグリコーゲン分解(+心臓の筋肉の収縮力を増加させる)
糖質コルチコイド:アミノ酸からグルコースを合成
という感じです。
つまり、寒い中で体温を維持しようとするだけでも物凄くエネルギーを使っているのです。薄着で寒い所をうろちょろしてると運動したのと同じぐらい疲れてしまったりしてしまいます。要注意。
また、交感神経やアドレナリンによって心臓の拍動が促進されたり、運動神経によって震えが起こることによっても熱が産生されます。筋肉の緊張も疲れの一因でしょう。