つねぴーblog

元「とある研修医の雑記帳」。アウトプットが趣味です。医学以外の事も投稿するやもしれません。

三毛猫とX染色体不活化のお話

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三毛猫は何故毛の色が場所によって違うのでしょう…。

分子生物学的なお話です。

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■X染色体とY染色体について簡単に

 

雌と雄では性染色体が異なり、雌には2個のXX染色体、雄にはX染色体とY染色体が1つずつあります。よって、雌の細胞にはオスの細胞の2倍のX染色体遺伝子があることになります。哺乳類のXとY性染色体の遺伝子の内容は根本的に異なっていて、X染色体は大きくて1000以上の遺伝子を含むのに対して、Y染色体は小さく遺伝子は100以下である。

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大きさもX染色体のほうがずっと大きいです。

Xを2つ持ってればメス、XYならオス。簡単ですね。

 

 

■遺伝子量を調節するメカニズム

哺乳理では遺伝子量補償という雌雄間のX染色体遺伝子産物の量を同等にする機構が進化しています。メスはX染色体をオスの2倍持っていますが、だからといって単純に2倍のタンパク質を作っていたらバランスが崩れてしまって致死的となってしまいます。

ですから、X染色体と常染色体の遺伝子産物(つまりタンパク質)の比率を正しく維持する仕組みがあります。

 

哺乳類における遺伝子補償は、雌の体細胞の2個あるX染色体のうち1個を転写的に賦活化するX染色体不活性化により行われます。雌の胚の発生初期の1000個ほどの細胞からなる時期に、各細胞のX染色体のどちらかが高度に凝縮してヘテロクロマチンになります。ヘテロクロマチンというのはDNAがヒストンというタンパク質に強く巻き付いて折りたたまれてる状態です。使わない道具をダンボールに詰め込んで封をしてしまったような感じとも言えるかもしれません。。

X染色体不活性化によって1つの核の中に2個のX染色体が同じ転写調節蛋白に出会っても発現は全く異なる状態で共存できるのである。

 

 

■メスの発生初期に各細胞でX染色体のどちらかが不活性化される

 

母方由来(Xm)と父方由来(Xp)のいずれのX染色体を不活性化するかの選択はランダムです。XmとXpのどちらかが不活性化されると、それ以降、細胞分裂を繰り返しても休止した状態が子孫まで維持されることから、不活性化状態はDNA複製と有糸分裂が何回続いても忠実に保たれます。X染色体、不活性化は胚で1000ほどの細胞が作られた後にランダムに行われるため、雌はXmかXpのどちらかが休止状態のクローン細胞集団からなるモザイクです。

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<細胞の分子生物学より引用>

 

 

姉妹細胞同士は発生段階を経過してもすぐ近くに配置する傾向にあるので、これらのクローン集団は成体で小さな塊となって分布する。X染色体不活性化により色が赤と黒の三毛になる「三毛猫」が好例なのです。三毛猫はX染色体の1子に毛の色を赤くする遺伝子を、もう一個に毛の色を黒くする対立遺伝子を持ち、全く違う色合いのまだらな模様になるのはランダムなX染色体不活性化の結果なのです。一方、この遺伝子系統のオス猫は、母親からどちらのX染色体を受け継いだかによって赤一色か、黒一色になる。X染色体不活性化は何千回もの細胞分裂を経て維持されます。

 

■実はオスの三毛猫も存在する

 

以上の通り、三毛猫はメスにしか見られないX染色体の不活化というエピジェネティックな現象によって生まれます。したがって、三毛猫は基本的にはメスです。

しかし…

3万匹に一匹の割合でオスの三毛猫が生まれることが知られています。オスの三毛猫は、実はX染色体を2つ、Y染色体を1つ持っています(染色体の分離異常)。オスなのにX染色体が2つあるため、X染色体の不活化が起こり、三毛猫になれるのである。非常に珍しいので、高価で取引されたとか、船乗りにお守り代わりに用いられたなんて逸話もあります。

 

■三毛猫のクローンは作れない

 

三毛猫の話で重要な点は、2つあるX染色体上の遺伝子のどちらが発現するのかは、細胞系列ごとにランダムに決まるという点です。ちょうど三毛の斑のように、ある場所の細胞では片側のX染色体所の遺伝子が発現し、別の場所の細胞ではもう片方のX染色体の遺伝子が発現します。つまり遺伝子発現がモザイクのようになっています。このようなモザイクは完全にランダムで決定しているので、同じゲノムを用いて三毛猫のクローンをつくろうとしても毛の斑模様だけは毎回違ってしまうのです。