つねぴーblog@内科専門医

アウトプットが趣味です。医学以外の事も投稿するやもしれません。名前は紆余曲折を経てつねぴーblogに戻りました

移転しました。

粘膜免疫、免疫記憶について

免疫学についてまとめ+一問一答です。


【免疫記憶】

Q免疫記憶ってなんですか
Q一次免疫応答と二次免疫応答の具体的な違いはどんな感じでしょう?
Q体細胞超変異とは何ですか?
Q親和性成熟(アフィニティマチュレーション)とは何ですか?
QT細胞は全てメモリーT細胞になるのですか?
Qテトラマー染色とは何ですか?



【粘膜による免疫】
Q粘膜免疫系とは何でしょうか。
Qパイエル板とは何ですか?

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Q免疫記憶って何ですか

獲得免疫を担うリンパ球において見られるものです。免疫反応により精製された、抗原特異的B細胞、抗原特異的細胞が生体内に長期間生存し、再び同じ異物が侵入してきた際に早くて強い免疫応答を引き起こします。1度目に異物が入ってきたときの免疫反応を一次免疫応答と言い、2度目に同じ種類の異物が入ってきたときの免疫反応を二次免疫応答といいます。

Q一次免疫応答と二次免疫応答の具体的な違いはどんな感じでしょう?

A.まず、作られる抗体の種類が違います。一次免疫応答ではIgMが主流、二次免疫応答ではIgGが中心です。続いて、抗体遺伝子の体細胞超変異(別のQ参照)は一次応答では低いですが、二次応答では高くなります。つまり、抗原親和性の高い抗体がたくさん作られるようになると言うことです。

Qちなみに体細胞超変異とはなんですか?

まず基本的な話として、幹細胞が分化して体のさまざまな細胞に分化していくが、この分化した細胞を体細胞といいます。幹細胞が体細胞に分化していくときにごく稀に遺伝子に変異が起こることがあります(体細胞変異)。B細胞はが抗体産生細胞へと分化する課程でV領域の遺伝子内に突然変異が起こる(変異率は普通の1万倍!)。この超変異によって抗体の抗原との親和性が大きく変動し、高親和性を獲得したB細胞が一次免疫反応の過程で選択される。勿論、この変異によって自己抗原と反応してしまう抗体も作られてしまうが、これらは除去または不活化される。



Q親和性成熟(アフィニティマチュレーション)とは何ですか?

上述した体細胞超変異に基づき、同じ抗原で免疫を繰り返すことで高親和性の抗体が大多数を占めるようになること。(親和性の高くない抗体や自己抗原に反応してしまう抗体は除去されるから)



QT細胞は全てメモリーT細胞になるのですか?


A.多くの活性化T細胞はエフェクターT細胞になり、一部だけがメモリーT細胞(記憶T細胞)として残ります。多くのエフェクターT細胞が死んでしまった後もメモリーT細胞はサイトカイン(IL15,IL7)の作用によって生き残ることが出来ます。


Qテトラマー染色とは何ですか?


A.テトラマー染色というのは簡単に言えばCT8T細胞を定量的に検出する方法のことです。どのような原理かというと、抗原特異的CD8+T細胞は固有のT細胞受容体を細胞表面に発現しています。この受容体はMHCクラス1分子に結合した抗原ペプチドを特異的に認識し、結合することが出来る。しかしながら、これらの結合力というのは弱いためにすぐに離れてしまう。そこで開発されたのがテトラマーである。
MHCクラス1とペプチドの複合体を4量体化(テトラ)することによって目的の抗原との結合力を強め、安定化させることが出来るのである。そしてテトラマーはその4量体に蛍光で標識しているため、特異的な抗原と結合した際に光り、それを測定することによって抗原特異的CD8+T細胞を定量することが出来るのである。



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リンパ組織について自信がない人は


「リンパ組織について詳しく」
http://d.hatena.ne.jp/tsunepi/20121027/1351336757
を読んでからきてね〜。



Q粘膜免疫系とは何でしょうか。

まず、粘膜とは

粘膜は、上皮細胞に覆われた外胚葉由来の上皮層である。吸収と分泌に関わる。様々な体腔に配置し、外部環境や内部臓器に面している。鼻孔、唇、耳、生殖器、肛門などあちこちで肌と繋がる。

(by wikipedia)

人の身体は口腔や鼻腔から始める一本の管と考えたときにまず外環境の異物というのは粘膜に触れることになる。特に腸管の粘膜が異物がもっとも侵入しやすい場所で、びろーんとのばすと面積としてはテニスコートの1.5面分にもなる。ここから大量の病原微生物が侵入を試みるわけであるが、生体は巧みにそれを防御する機構を発達させていて、消化管粘膜特有のリンパ組織が整然と待ち構えているのである。

メンツを紹介すると、

パイエル板
孤立リンパ濾胞
盲腸
口蓋扁桃
咽頭扁桃(アデノイド)
腸管膜リンパ節

などである。以下重要なメンバーについて取り上げていく。


Qパイエル板とは何ですか?


腸管にある集合リンパ小節のこと。ヒトでは小腸の空腸の部分から孤立リンパ小節が出現し、回腸に至るとリンパ組織が増加して、粘膜内に、20〜30個のパイエル板が出現する。1個のパイエル板は約20個のリンパ小節から構成されている。つまり400〜600のリンパ小節があるということで、リンパ小節というのは以前言ったとおりリンパ球の集結した兵舎みたいなもんで、いくら雑兵が攻めてきたところで決して動じることはない。かもしれない

そしてパイエル板で最も重要な細胞がM細胞である。

M細胞は、腸管の上皮組織の一部で、腸管内と接している。M細胞は腸管内腔側からエンドサイトーシスによって腸管内腔の細菌などの抗原を取り込み、基底膜側で接触しているT細胞やB細胞、マクロファージに提示することによって、パイエル板内の免疫細胞群に抗原情報を伝達する。パイエル板内では種々のリンパ球などの間で複雑に情報処理が行われ、病原微生物に対してはIgAの分泌を中心とする免疫応答による排除が、誘導されているのである。

つまり、パイエル板のM細胞は近くにいる異物をぱくっと捕らえてしまうのである。普通のリンパ節は抗原を取り込むための輸入リンパ管が存在するのだが、その話はまた後で。
そしてまた、このM細胞、食事の免疫寛容にも深く関係しているのだがそれも後述。

参考までに、M細胞以外にも樹状細胞が樹状突起を管腔側にのばして抗原を取り込むこともある(ダルシムみたいなもん)。


まとめておくと、

パイエル板は小腸にある兵士(リンパ球)が大量に駐屯している軍事基地(リンパ小節)
M細胞は近くにいる敵兵を捕まえて捕虜としてT細胞やマクロファージなどに提示する兵士

といったところだろうか。


Q咽頭扁桃とは何ですか?

のどの周辺には多くのリンパ組織がある。咽頭扁桃もその一つで、鼻の奥のほう、口蓋垂(のどちんこ)の裏側にあります。

Q消化管の防御機構にはどのようなものがありますか
ムチン(by杯細胞)(物理的なバリア)
抗菌ペプチド(byパネート細胞)
ディフェンシン(化学的なバリア)
腸内細菌(消化管には1000種類以上の腸内細菌が強制しています。株に行くに従い数が増え、合計1Kgに達します。人間が消化できない食物繊維(セルロースなど)を分解し、栄養素を供給し、また病原細菌の繁殖、侵入をブロックしてくれます。

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食物由来のタンパク質や腸内の常在細菌に対してはアレルギー反応などの異常な免疫反応が起こらないような免疫寛容が、それぞれ誘導されていると考えられている。つまり、食物由来のタンパク質に激しく免疫応答を起こしてしまう食物アレルギーにも、パイエル板での情報処理が深く関係していることになる。