つねぴーblog

元「とある研修医の雑記帳」。アウトプットが趣味です。医学以外の事も投稿するやもしれません。

発がん性物質ベンゾピレンは何故危ないか

ベンゾピレン含有食品、回収せず

辛ラーメンで知られる韓国の食品会社・農心が販売するラーメンやうどんなど6種類のスープから、発ガン性物質のベンゾピレンが検出されたことが明らかになった。韓国のテレビ局MBCによる報道をもとに、複数の韓国メディアが24日、相次いで報じた。ベンゾピレンは約350〜400度の高温で、食品を調理または製造する過程において、炭水化物やタンパク質、脂肪などが不完全燃焼された場合に生成される物質。世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究所は、1級発がん物質に分類しており、人体に蓄積された場合はガンを誘発し、突然変異を起こす環境ホルモンとされている。

  韓国の食品医薬品安全庁が6月、農心をはじめ、国内に流通するラーメン・うどん製品のスープ30種を調査した結果、農心の人気の高い商品からベンゾピレンが検出された。しかし、この結果に対し、食品医薬品安全庁と農心側は回収措置を取らなかったと報道された。これに対し、食品医薬品安全庁は「食用油の場合はベンゾピレン検出量の基準が決まっているが、ラーメンのスープにはこのような基準がなかった」とし、「世界的に加工食品にベンゾピレンの基準を設定している国はないのが実情。人体に危害が生じない程度に安全である」と説明。一方、農心側は、「スープから微量のベンゾピレンが検出されたことを問題にすることはできない」としながらも、「6月に食品医薬品安全庁の通報を受けて生産工程を2カ月間停止し、調味料の納入業社を変更した」と説明した。また、農心の関係者は、今後、問題の製品を回収するかどうかについて「製品が安全だと判断して販売を続けていた。人気の商品だけに、会社の経営陣は回収するかどうかを議論しており、まだ決定していない」と述べたという。

(by サーチナ一部引用http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121024-00000036-scn-kr


ベンゾピレンの生成メカニズム


ベンゾピレンは炭水化物や脂肪などを不完全燃焼させたときに生じる発がん性物質である。また、そのほかにも自動車の排気ガスやたばこの煙、焦げた食べ物などにも一部含まれる。
ベンゾピレンは体内でいくつかの段階を経て発がん物質となる。

ベンゾピレン

(+)-ベンゾ[a]ピレン-7,8-オキシド

(-)-ベンゾ[a]ピレン-7,8-ジヒドロジオール

ベンゾピレンジオールエポキシド

という複雑な過程を経る。途中でシトクロムP450やエポキシ度加水分解酵素といった酵素の作用を受けている。


ベンゾピレンの発がん性機構

最終的にできあがったベンゾピレジオールエポキシドは、2つのエポキシドに電子が偏っているために、その間にある炭素は電子密度が低い(このような状態を求電子的という)。つまりベンゾピレンという物質の一部は電子が少ないので電子を持っている物質とくっつこうとする。そして、くっついてしまうのがDNAなのである(DNAへのインターカレートという)。

ベンゾピレンはDNAのグアニン塩基という分子と結合することが知られていて、これによりDNAの形がゆがんでしまうのである。DNAというのは人間の蛋白質を作り出す設計図のようなもので、厳密に管理されていないといけないのだが、ベンゾピレンが結合することにより、調節できなくなり、細胞分裂の際などにエラーを起こしてがん化を引き起こしてしまう。

ベンゾピレンは確かにたばこの煙、焦げた食べ物などにも含まれるために、少し口にしたら死んでしまうような毒物ではない。癌という病気はその性質上、発症するのに時間がかかる為、もし将来ベンゾピレンが原因で癌が発症したとしても因果関係を証明することは非常に難しい。放射線問題の流行語であった「直ちに健康に影響はない」という言葉を思い出さざるを得ない。

しかしながら発がん物質が含まれることがわかっても尚回収しないというのは一体どういう企業体質なのだろうか・・・。本当に信じられない話である。日本ではノグリラーメンを早急に回収する方向らしいが。


正しく怖がることの難しさ

ちなみに、ネットの書き込みとかを見ていると「ベンゾピレンは一級発がん物質に分類されている!」と凄く煽られいて一般の人がこれを見ると「ベンゾピレンは発がん物質の中でも特に危険なもの」という印象を持たれると思う。しかしそれは正しくないかもしれない。

国際がん研究機関 (IARC)の発がん物質の分類というのは大きく4つのグループに分けられているが、次のような基準による。

Group1:ヒトに対する発癌性が認められる化学物質、混合物、環境

Group2A:ヒトに対する発癌性がおそらくある化学物質、混合物、環境

Group2B:ヒトに対する発癌性が疑われる化学物質、混合物、環境

Group3:ヒトに対する発癌性が証明できない化学物質、混合物、環境

Group4:ヒトに対する発癌性がおそらくない化学物質、混合物、環境

(by IRAC HPより)

ベンゾピレンはこの分類の中でGroup2Aなのである。ちなみにもっと危ないGroup1にはアルコールやタバコの煙が分類されている。「タバコよりかは危険度が低いのだから安心してください」、とは間違っても言えないがあまりネットのあおり文句に乗せられて必要以上に怯えるのも要注意である。自分から進んで口にしたくない物質であることは間違いないが「どのぐらい危険なのか」というのを正しく評価すると言うことは予想以上に難しいのではないかと思ってしまった今日この頃である。