つねぴーblog

元「とある研修医の雑記帳」。アウトプットが趣味です。医学以外の事も投稿するやもしれません。

骨格筋の収縮メカニズム

骨格筋の収縮のメカニズム(生理学)


筋肉の種類について。骨格筋の位置づけ

筋肉といってもいくつかの種類がある。それらは人体の何処に位置するかで種類が分けられ、主に横紋筋と平滑筋に区別される。横紋筋というのは文字通り、外見上規則正しい横紋が見られるためにこう呼ばれている。一方、平滑筋というのは横紋筋と違って筋節(詳しくは後述)のない筋肉のことである。横紋筋には骨格筋や心筋がある。平滑筋は血管、膀胱、子宮など管状あるいは袋状器官では壁に見られる。

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ここでは骨格筋について話を進める。骨格筋というのは何か身体を動かそうと思ったときに動く筋肉のことであるのだが、筋肉とはいったいどのような構造になっているのだろうか。

実は筋肉は筋繊維(筋細胞)と呼ばれる繊維状の細胞が束になって出来たものなのである。この筋繊維というのは一本一本が肉眼出来るぐらいの大きさである(牛肉や豚肉と同様)。そして筋繊維自体も更に多数の細かい繊維が束になっているのである。この筋繊維を構成する繊維を筋原繊維という。つまり

小さい順に言うと、筋原繊維<筋繊維<筋肉 となる。


何故骨格筋は横紋筋と呼ばれるのか

筋原繊維は数種類のタンパクで出来ているのだが、しましま模様(横紋)が規則的に見えるために横紋筋と呼ばれる。横紋筋のさらに細かい構造を解析すると中には太いフィラメント、細いフィラメントと呼ばれる2つの繊維があることがわかっている。

つまり、
太いフィラメント+細いフィラメント=筋原繊維<筋繊維<筋肉
ということになる。そして太いフィラメントと細いフィラメントが規則正しく順に並んでいるのでしましまに見えるために骨格筋は横紋筋と呼ばれるのは先ほど話したとおりである。



太いフィラメントと細いフィラメントはお互いに向かい合わせになっていて重なり合っている。そして細いフィラメントは隣の細いフィラメントとくっついていて、その境界線をZ膜と呼んでいる。細いフィラメントと横の細いフィラメントの間に太いフィラメントが入っているのである。そしてZ膜からZ膜までの間を筋原繊維の基本構造として筋節(サルコメア)という。つまり筋節がずっと横に並んで筋原繊維を構成すると言うことである。詳しくは下の図を参照。

窓のブラインドのように光(電子)がスーっと通り抜けるからそのエリアはIsotoropicな性質で、その頭文字を取って「I」。なんだか遮るものが多くて(太くて)光がうまく通り抜けないから逆にAnisotropicな性質で「A」と覚える。また、H帯はミオシン、太いフィラメントだけの部分なのでHeavyのHと覚える。

つまり、筋節<筋原繊維<筋繊維<筋肉
ということになる。

ではこの骨格筋は神経からの信号をどう受け取っているのか


まず、末梢神経系について概説。
末梢神経系はその機能から体性神経系と自律神経系に分けられる。中枢から末梢へ指令を送る遠心精神系と、末梢で受容した情報を中枢へ伝える救心性神経を持つ。体性神経系では、遠心精神系を運動神経、救心性神経を知覚神経と呼ぶが、一般に、自律神経系では自律神経というと遠心精神系を指し、求心性神経を内臓知覚神経と呼ぶことが多い。

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ここでは骨格筋に関係する運動神経の話を続ける。

上のように、体性というのは感覚器からの求心繊維からなる知覚神経と遠心性の運動神経がある。
運動神経とは骨格筋を直接支配する下位運動ニューロンを指す。運動神経の終末部では多数の足に分岐していて(図を参照)、その中には神経伝達物質を含んだ多くの小胞が見られる。この神経伝達物質とはアセチルコリンのことである。(ポイントとして、自律神経の神経伝達物質はアセチルコリンとアドレナリンがあるが、運動神経の神経伝達物質はアセチルコリンだけである。)この神経の終末部は運動神経終板の凹部にはまり込んでいる。このような神経と筋肉の連続している構造をひっくるめて神経筋接合部という。神経と筋肉の間の空間はシナプス間隙と同じようなものであり、(詳しくは*1参照)ここに神経興奮によってアセチルコリン(ACh)が遊離される。遊離されたAChは終盤のニコチン受容体に結合し、ナトリウムチャネルが開き、ナトリウム流入は脱分極電位、すなわち終盤電位を発生させる。この局部電位で生じた電流の吸い込みが近接した筋繊維膜を脱分極させ、活動電位が発生し、筋収縮を起こす。末梢運動神経に働く薬は神経筋接合部の化学伝達を作用点とする。



*1:神経の活動電位は具体的にどのように筋肉に到達しているのだろうか。活動電位は終板に到達しても、筋細胞との間に隙間があるのでそこまでは伝わらない。活動電位が終板に到達すると、その電位変化を認識して開くカルシウムチャネルがあり、神経細胞内にカルシウムが流入する。これがきっかけとなってアセチルコリンを含んだ小胞体が神経終板と筋細胞の隙間に放出される。これが筋細胞の細胞膜上にあるアセチルコリン受容体と結合するとナトリウムチャネルが開き、筋細胞でも活動電位が発生するのである。つまり、神経細胞では最初、活動電位という電気的な信号が一旦、神経細胞と筋肉細胞の間ではアセチルコリンという化学的な信号に変換されて、また最終的に、アセチルコリンが筋細胞の受容体とくっつくことで活動電位という電気的な信号に再変換されるのである。

終板周辺の筋細胞の細胞膜に発生した活動電位は、筋細胞全体に広がる。更に、筋細胞の細胞膜が陥入して筋細胞内に深くへこんでるT管(横行小管)に伝わる。(このT管には両サイドから筋小胞体がくっついていて、この構造を3つ組み構造という。)細胞膜から伝導してきた電気刺激によって横行小管にあるジヒドロピリジン受容体が活性化する。この筋細胞のジヒドロピリジン受容体は筋小胞体のリアノジン受容体の物理的に結合していて活性化されると考えられる。リアノジン受容体は筋小胞体からのカルシウム放出を調節する役割を担っており、筋小胞体内に蓄えられていたカルシウムが細胞内に放出されるのである。
(心筋では、筋小胞体からのカルシウム誘発性カルシウム放出が主な機構であるが、骨格筋ではジヒロドピリジン受容体と物理的に結合することで活性化を引き起こすと考えられている。)

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それでは筋細胞内に放出されたカルシウムはいかにして筋肉を収縮させることが出来るのか。
先ほどの話を思い出してもらいたいのだが、筋肉を構成するのは筋繊維、筋繊維を構成するのは筋原繊維、そしてこの筋原繊維は筋節という単位から成り太いフィラメントと細いフィラメントが存在するという話をした。
筋肉が収縮する機構というのは、実は筋肉の最小単位である筋節が短くなることによって全体として収縮しているということによるのである。筋節が短縮するのは、太いフィラメント同士の隙間に、両側の細いフィラメントが滑り込むことにより起こるのである。この滑り込み現象こそが、筋収縮の本体である。

滑り込み現象が起こるには、細いフィラメントのアクチンと太いフィラメントのミオシン頭部が結合することが必要なのだが、普段はこの間にトロポニンという分子が間にあって結合できないのである。しかし、カルシウムイオンがあるとこの邪魔者のトロポニンと結合してトロポニンはトロポミオシンという別の分子を支点にしてずれてくれるのである。こうなれば太いフィラメントのミオシン分子の頭部と細いフィラメントのアクチンが結合でき、ミオシン頭部はアクチンを引き込んで、筋節の長さが短くなるのである。