つねぴーblog@内科専門医

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弱酸性はなぜ体に良いのか

弱酸性が体に良いのは本当か


ビオレ等CMなどでもおなじみの弱酸性のシャンプーやボディーソープ。
「皮膚に優しい」などのキャッチフレーズで弱酸性は体にいいというイメージが定着しちゃいそうであるが実際のところ、「弱酸性」というのは体に良いのだろうか。

人の皮膚は弱酸性であるが、これは皮膚で分泌されている皮脂が皮膚の常在菌の酵素リパーゼで分解されて脂肪酸になるためである。このように皮膚を弱酸性に保つ事によって黄色ブドウ球菌等の増殖を防ぎ、化学的なバリアーとして役立っているのである。

直感的に考えると、皮膚が弱酸性ならボディーソープも弱酸性の方が安全そうである。
その一方で、健康に良いとされる温泉の成分はアルカリ性である・・・。一体どちらが安全なのだろうか。

弱酸性であれアルカリ性であれどちらも皮膚を洗浄する際はその界面活性剤としての効果を利用したものである。アルカリ性であるせっけんで皮膚を洗うと皮膚は弱酸性なので中和されて洗浄効果は持続しない。しかし、弱酸性のボディーソープで体を洗うと、皮膚も弱酸性なので中和される事なく、長時間にわたって皮膚に界面活性剤が残留してしまうのである。よく磨いて落とせばよいが、完璧に落とす事は難しいだろう。するとこの界面活性剤は角質細胞間の脂質に働き続け、角質のはがれを早めるのである。界面活性剤は水分を吸着するので使用感としては肌に優しく、しっとり感を出すのだが、毎日使い続けると皮膚内に浸透して行き、あまり望ましくない。

もちろん、「弱酸性が危険」といいたい訳ではなく、弱酸性にはメリットとデメリットがある事を理解してもらいたい。また一方でアルカリ性は皮脂の弱酸性で中和されるために長く皮膚上にとどまる事がないが、肌が弱い方や皮膚疾患のある方はアルカリ性で肌を痛めてしまう可能性があるので注意が必要である。(ただ、前述の通り温泉もアルカリ性なので必要以上の警戒は無用である)


*石けんというのは一般的に高級脂肪酸の塩の総称で、洗浄目的では脂肪酸ナトリウムや脂肪酸カリウムが一般的である。