つねぴーblog@内科専門医

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移転しました。

なぜ食後すぐに寝てはいけないのか

どうして食べた後にすぐ寝てはいけないのだろうか


「食後直ぐに横になるとウシになる」とも昔から言われているが科学的・医学的根拠はどこにあるのだろうか。
食べ物が胃で分解されたときに分泌される胃酸である。胃酸はpH1〜2の強酸で非常に強力な殺菌作用を持っている。であるから人間は食べ物の中のくだらない細菌に殺される心配もないのだが、食事後間もないときは胃酸が残っているので、この状態で横になると、胃から食道の方に逆流してしまうのである。そうすると食道は胃酸によってダメージを受けてしまうのである。(逆流性食道炎という)


とは言え、食後すぐに寝る習慣のある人が必ずしも食道を傷つけているというわけではない。消化器は食道から胃へと繋がっているが、そのつなぎ目の所(正確に言うと食道の下側)に下部食道括約筋(LES)という筋肉が存在していて、胃液が逆流しないように閉じているのである。

つまり、この下部食道括約筋の働きが弱まっている人が逆流性食道炎になってしまうのである。どういう人がこの筋肉が弱まってしまうのかというと、脂質の多い食事を好む人、食べ過ぎの人、高齢者などである。脂質を多く取って肥満体質の人は腹部に脂肪が増えて胃が圧迫されて胃酸の逆流が起こりやすくなっていると考えられる。また、高齢者は下部食道括約筋の機能が低下することによって逆流を引き起こしやすくなる。



逆流食道炎の症状・問題

この逆流性食道炎は55歳以上の人口の約5%に見られるが、炎症は通常そこまで重たくならないがひどい場合は食道粘膜のびらん、潰瘍をきたし、深部にまで炎症が及ぶこともある。一番問題となるのは食道下部の細胞を傷つけてしまうことである。食道下部には扁平上皮細胞という平らな細胞が並んでいるのだが、胃酸で傷が付くとこれらが一度死んで円柱上皮粘膜に置き換えられる(これを医学的には円柱上皮化生=バレット食道という)。バレット食道の患者は健常者に比較して30〜40倍の確率で食道癌を発症することが知られている。